シナリオ 幻蒼海の魔影 後編

 
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チャプター1


ハムト「前回は無人島スタート。今回は漂流スタートなのニャー。
    サッチ!!仲間の人魚っていつ来るのニャ!!
    食糧も水も尽きかけなのニャ!!」

サッチ「落ち着いてくだせえ。人魚は早々会えるもんじゃねえですよ。」

ハムト「人魚なんて本当にいるのかニャ?」

サッチ「魔ノ海域に来るまで時間がかかるだけでさあ。」

ハムト「他の連中はどうしているのニャ~。
    特に、あのおっさん海賊はとっちめてやらんとニャ。」

サッチ「海賊と海軍も気になりやすね。」

ハムト「神官の連中も助けに来ないのニャ。」

サッチ「魔獣の対応で忙しいんじゃないでしょうかねぇ。
    肝心のキャプテン勇者は此処にいますしねぇ。」

ハムト「やっつけながら進むしかないのニャ。頼んだのニャ。キャプテン勇者。」


チャプター2


神官達は、魔ノ海域から一旦離脱して海軍を待っていた。

ルー「トト。これで本当に勇者様に会えるの?」

トト「うんうん。会えるよー。それで海に伝わる人魚の舞いを踊ればー。」

ルー「嘘でしょ!!」

テラス「いや、ルー姉様も気付こうよ。またトトの悪ふざけだよ!!」

トト「ボクらは、今の所大して役に立ってないんだからサービスぐらいルー姉さんに頑張ってもらわないと。」

ルー「一理あるわね……。」

テラス「ないよ。ルー姉様騙されないで!!」

アレウス「勇者は大丈夫だろうか……。」

テラス「アレウス兄様だけは真面目だわ。」

ルー「魔ノ海域がかなり不安定になってきましたね。魔獣も出現する様になってきました。」

アレウス「これだけ不安定な海域では、我々の操船技術では危険だからな。」

トト「勇者のヒトは大丈夫なんじゃないかな。強いし、ハムのヒトもいるしね。
   ボクは海軍のほうが心配だよ。」

アレウス「アルメイダは優秀な指揮官だ。個人戦闘力も申し分ない。」

テラス「マルチナちゃんもジュアンさんも強いんでしょ。」

ルー「そうですね。夢ノ国の海は特に危険ですから。生半可な実力では海軍にはなれません。」

アレウス「私は黒キ者の姿が見えないのが気になる。何か企んでいるのではないかと思う。
     勇者は魔ノ海域に囚われている。奴にとっては絶好の機会のはず。
     魔獣が増えたのは、この海域を喪界にしようとしているのではないかな。」

トト「有り得るね。でも、姿をまったく見せないのはおかしいよね。」

テラス「黒キ者って、何を考えてるのかわからないんだよね。何か楽しんでるみたいな。」

アレウス「夢ノ国を喪界に変えて自分の思い通りにしようとしているのは確かだ。」

トト「そうだね。今回も何か関係しているんだろうねー。」

ルー「被害が広がらない様に魔ノ海域から出てきた魔獣を倒しましょう。」

アレウス「そうだな。我々に出来るのはそれぐらいだ。」


チャプター3


ジャック「おしゃあ。野郎共。お宝目指して、いざ進め!!
     ……。
     幽霊船だと誰も応えやしねえ。調子狂うぜ。
     思えば、俺しかこの船で生きてねぇんだよなぁ……。」

ジャックに応える様にオウムが鳴いた。

ジャック「おわ!!脅かすんじゃねぇ。
     よく考えたら、勇者を置き去りにしてきちまったんだよな。
     この世界の救世主なんだっけか。勇者って……。
     それって重罪じゃないのか?縛り首どころじゃなくないか?
     ま、まぁサッチもいるから何とかなるだろう……勇者だし。
     アルメイダもアンも無事逃げれたろうしな。
     晴れてクロヒゲの財宝を目指せるってもんさ。
     俺には財宝が必要なんだ……。」

「クズ、ダメ、ダメ男」と肩のオウムが鳴いた。

ジャック「クロヒゲのオウムだか知らないが、財宝見つけたら焼き鳥にしてやるからな。」


チャプター4


アン「この魔ノ海域を制覇してクロヒゲの財宝を手に入れてやるんだ!!
   海軍みたいにお堅い連中に仕切らせておくなんてダメさ。
   そして、その頂点に立つのは海賊女王のあたしさ!!」

その時、荒波の中から飛沫をあげながら黒い船体が姿を現した。

黒キ者「アッアッアッアッハッハッハヒィ。」

アン「あいつは黒キ者!?どうして魔ノ海域に?」

黒キ者「おう、未来の海賊女王じゃねぇか。」

アン「何の用だ。お前もクロヒゲの財宝を狙っているのか?」

黒キ者「クロヒゲ?俺が金に困っている様に見えるか?浪曼を追い求めている様に見えるか?」

アン「じゃあ何しに此処に来た?」

黒キ者「賭けの見物さ。このまま魔ノ海域が喪界になるか。お前らが財宝にたどり着けるかのな。」

アン「どういう意味さ?」

黒キ者「そのままの意味だ。俺はどっちだっていいんだ。面白ろけりゃな。
    せいぜい財宝に飲み込まれん様に気をつけろ。
    アッアッアッアッハッハッハヒィ。」

黒キ者の船は荒波をかきわけてアンの船より先に進んでいった。


チャプター5


アルメイダ「宝の地図は揃ったようだね。」

ジュアン「完璧とは言い難いですがね。元々不安定な場所にありますし。」

マルチナ「急に敵が増えたので殴り甲斐があります!!」

アルメイダ「クロヒゲの財宝は私達でいただくよ。海軍増強のためにね。」

ジュアン「アイアイサー。これで給料も上がるってもんだ。」

マルチナ「さらにいっぱい海賊を殴れます。」

ジュアン「キャプテン姐さんは、海軍命ですねぇ。」

アルメイダ「私は海賊が嫌いなんだよ。
      自由だか浪曼だか知らないが、海賊って名前を免罪符に好き勝手やってやがる。
      海軍でも冒険は出来る。不法な商船を取り締まれるのさ。
      私は海にも規律が必要だと思ってるのさ。そのための海軍増強さ。」

ジュアン「志があるんですね。キャプテン姐さんは、鞭で屈強な男共を叩きたいだけかと思ってました。」

アルメイダ「アホか!!」

ジュアン「叩かれると嬉しいっていう船員もいるようです。」

アルメイダの鞭が鋭い音を発してジュアンを打った。

ジュアン「ぎゃあ!!」

アルメイダ「私は、そっちの趣味はないんだよ。今度叩かれたい奴がいたらマルチナに殴ってもらう。」

マルチナ「わーい。仲間を殴るのは気が引けますが。頑張りますよ。」

ジュアン「き、君喜んでるやないか。」


チャプター6


月の光だけが、あなたの行く手を照らしていた。
波の音は穏やかに規則的に響いて、眠りを誘った。

ハムト「結局、今日も来なかったのニャー。」

サッチ「ヤシ実のある小島は見つかったのでよかったじゃねえですか。」

ハムト「肉球でヤシ実を割る仕事は飽きたのニャ!!」

サッチ「そりゃあ、役割分担ってもんでしょう。
    あっしは航海士としての努めがありますし。骸骨は船をこいでやす。
    キャプテン勇者が魔獣を倒してくれなきゃ、あっしらはお陀仏でしたぜ。
    ハムトさんはヤシの実を割る係でさあ。」

ハムト「もう、嫌ニャ。幽霊船でもいいから楽したいニャ。」

大きな水飛沫と共に何かが波間から飛び出した。
それは、三日月が空中で一回転するように飛び跳ねた。

メアリ「七つの海の守護者。マーメイドプリンセス・メアリ、参上ー。」

ハムト「は?ニャ?」

サッチ「おお、久しぶりだなぁ。メアリ。」

メアリ「いかひげも元気そうね。」

ハムト「こいつが例の人魚ニャ?」

サッチ「そうでさあ。」

メアリ「あなたがキャプテン勇者ね。私はメアリ。
    あなたが陸の勇者なら。私は海の勇者って所よ。」

ハムト「なんニャ。勇者は陸でも空でも海でも宇宙でも勇者ニャ。」

メアリ「同じ勇者として親近感を感じるわ。」

ハムト「話を聞けニャ!!」

サッチ「メアリは、思い込みが激しい子なんでさあ。」

メアリ「協力するにあたっては、やっぱり拳と拳で語り合わないとねっ。」

ハムト「お前、何を言ってるニャ。」

メアリ「これから相棒になるんだから実力を知っておかないと。」

ハムト「勇者の相棒はハムトなんニャ!!
    まぁ、いいニャ。勇者。格の違いってやつを見せてやるニャ。」

メアリ「いっくよー!!」


チャプター7


メアリ「アイタタ。なかなかやるわね。流石、陸の勇者。
    でも、これくらいでは負けないわよ。」

ハムト「なんニャ。まだやる気かニャ?」

メアリ「光届かぬ深海の闇の力を使うしか無いようね。
    これだけは、これだけは使いたくなかったわ。
    このダークネスモードは強い力を持っているの。」

ハムト「なんか勝手に説明を始めたニャ。」

メアリ「ダークネスモードは強い心を持たないと闇に飲み込まれてしまうの。
    でも、私は数々の試練を経て、闇の力を使いこなせるようなったのよ!!」

ハムト「ふ、ふーんニャ……(なんか面倒な子ニャ)。」

メアリ「いくわよ。闇の力よ。光を取り戻すために黒き力を呼び覚ましたまえ!!
    うう、邪眼が疼くわ。でも、乗り越えるのよ。メアリ!!」

ハムト「こじらせちゃった子かニャ……。」

メアリ「はぁあああああ!!」

ハムト「本当にダークネスモードになったのニャ!!顔色悪いニャ。」

メアリ「この姿だけにはなりたくなかったわ……。」

ハムト「じゃあなるニャよ!!」

メアリ「行くわよ。キャプテン勇者!!」


チャプター8


メアリ「このダークネスモードの私が敗れるなんて……。
    あなたが本当の海の勇者ね。認めるわキャプテン勇者。
    これが本来の私の姿よ。闇の力を克服したメアリ。
    白き人魚姫メアリよ。」

ハムト「なんか、どんどん変わるニャあ。」

メアリ「これからは勇者の相棒は私ね。」

ハムト「何言ってるニャ。勇者の相棒はハムトニャ。刺身にすっどーニャ。」

サッチ「まぁまぁ。とにかくメアリに助けてもらいましょうや。」

ハムト「人魚姫ってもっと儚いもんかと思ったニャ。で? どうやって助けてくれるニャ。」

メアリ「押すわ。」

ハムト「は?ニャ?」

メアリ「私が、この船を押して泳ぐわ。」

ハムト「いや……。船とか用意してくれるんじゃニャいの?」

メアリ「私は人魚だから船いらないしね。
    そして、これが最終奥義。メアリ・ドレイク・ザ・ドレイコ・ドラゴン。
    リバイアサンの力よ。我に龍気モード!!
    シャキーン!!」

ハムト「自分で言うのかニャ!!」

メアリ「この状態になったメアリは通常の100倍の能力を発揮するのだ。」

メアリはあなたの船の後ろに着いて泳ぎ始めた。
小舟は船首が浮き上がるほどの速度で進み始めた。

ハムト「ちょ、ちょっと待つニャ。モーターボートみたいになってるニャ!!」

メアリ「このままいっくよー!!」

*注:龍気メアリには100倍の力は無い。メアリの思い込みである。


チャプター9


ジャック「うーん。あの水飛沫はなんだ?
     鯨でもねえし。イルカでもねえ。もの凄い勢いで近付いてくるな。
     魔獣にしては小せえ。船? 小舟なのか?
     人魚が小舟を押してる? んなバカな?」

ジャックは、自分の船体にぶつかる小舟を間の抜けた顔で見ていた。
轟音と共に船体は大きく揺らいだ。

ハムト「し、死ぬかと思ったニャ。何も魚雷の様に船にぶつかる必要はなかったニャ。」

サッチ「あっしも死を覚悟しました。」

ジャック「キャ、キャプテン勇者じゃねえか!?あとサッチと人魚!?」

ジャックの肩のオウムは「ニート」と鳴いた。

ハムト「おい、こら鳥!!ハムトはニートじゃないニャ!!」

メアリ「船泥棒のジャックね。私の相棒。キャプテン勇者があなたを成敗するわ。
    あら、キャプテンって響きヒーローみたいね?」

ジャック「とぼけた事言ってんじゃねえ。いいだろう。
     どっちがこの船に相応しいか戦って証明してやろうじゃねえか。」

ハムト「やるニャー。倒すのニャー。キャプテン勇者ー!!」


チャプター10


ジャック「参りました。この船はキャプテン勇者様の物です。(ドゲザァ)」

ハムト「ダ、ダサァ。おっさんプライドってもん無いのかニャ。」

メアリ「流石、キャプテン勇者。私の相棒ね。」

ジャック「で、俺は元の航海長に戻るとしますわ。」

ハムト「おっさん。一度裏切った分際で図々しいニャ。」

ジャック「俺も財宝が必要なんだ。」

ハムト「なんでニャ。お金に困ってるのかニャ?浪曼とか言わないニャ?」

ジャック「いやあ、慰謝料を払わないといけないんだよ。」

ハムト「は?ニャ?」

ジャック「海賊っていうのは港に女がいるもんだ。アンの母親もそうだし。
     結婚したんだが、みんな離婚されてしまってな。
     慰謝料がいくらあっても足りないんだ。」

ハムト「そんな現実的な理由で財宝狙ってたのニャ?」

ジャック「それもあるだけで。やっぱり海賊の夢である財宝は手に入れたいぜ。」

サッチ「どうしやしょうか?」

ハムト「サメの餌は勘弁してやるニャ。」

ジャック「ありがてえ。俺は使えるぜ。キャプテン勇者。」

ハムト「小舟を一艘あげるニャ。ハムト達と同じ様に漂流して頑張るニャ。」

サッチ「まぁ、妥当な所でしょう。海賊の情けだ。食糧と水もつけてやりやす。」

ジャック「いや、なぁ。一緒に頑張ろうぜ。」

メアリ「女たらしだし。自業自得ですね。」

ジャック「ちょ、ちょっと皆さん。」

メアリ「すべて片付いたら仲間の人魚に助ける様に言っておきますね。」

ジャック「そ、そんな~。」


チャプター11


ジャックは大海の真ん中で一人で漕いでいた。

ジャック「あのニャハニートめ。まぁいい。クロヒゲのオウムは持ち出せたしな。
     こいつと地図の欠片があれば、まだ財宝を見つけるチャンスはある。
     慰謝料も大事だが、やっぱり海賊は財宝を追い求めねぇとな。
     おっと、あの船影はアンのじゃねえかな。
     俺の持ってる宝の地図の欠片を取引の材料にしたら何とかならねえかな。
     こっちにはクロヒゲのオウムもいるしな。
     おーい。助けてくれー!!」


チャプター12


ジャックは船から突き出された板の上に立っていた。
海面には、いくつものサメの背びれが浮かんでいた。

ジャック「おお、愛する我が娘よ。実の父親に何て事するんだ……。」

アン「やっぱり海賊ってのはサメの餌ってシチュエーションをやっておかないとダメだと思うんだ。」

ジャック「そうか反抗期ってやつだね。充分だよ。こういうお遊びは終わりにしよう。」

アン「海賊の流儀ってやつだよ。」

ジャック「お母さんとの慰謝料はクロヒゲの財宝で払うからさ。」

アン「あたしが手に入れれば済むことだ。なんであんたに分け前をもらわにゃならんのだ。」

ジャック「……。」

アン「どうやら覚悟は出来たようだね。」

ジャック「違う。アン。あれを見ろ。宝島だ……。」

アンの船の前方に大きな島が見えた。その周りには巨大な渦潮が幾重も取り囲んでいた。

ジャック「宝島を護る壁。鮫の牙と呼ばれる渦潮だ。ちょっとでも操船をミスるとバラバラだ。」

アン「野郎共。帆を上げろ!!突っ切るよ。」

ジャック「俺は?」

アン「あんたに構ってる暇はなくなった。手伝いな!!」

ジャック「そうこなくっちゃな。愛しの我が娘。」

アンの船は帆をいっぱいに上げると全速力で渦潮に向かって進んでいった。


チャプター13


ジュアン「甲板掃除終わり……。」

マルチナ「疲れましたねー。」

ジュアン「クロヒゲの財宝があれば海軍はもっと充実するなぁ。何とか見つけたい。
     僕の家系は先祖代々海の男でね。
     海の男と言っても研究を生業としている学者が多かった。
     僕も、もっと海について知りたいんだ。
     そうすれば、人はもっと安全に海を航行する事が出来るしね。
     だから、僕も姐さんの夢が叶って欲しいと思ってる。
     マルチナは、どういう経緯で海軍に入ったんだい?」

マルチナ「両親が海賊に殺されてしまったのです……。」

ジュアン「それは悪い事を聞いた。」

マルチナ「みたいな暗い過去はないです。」

ジュアン「え?」

マルチナ「両親が港で酒場を経営していまして。酔っ払った荒くれ者を合法的に殴り倒していました。」

ジュアン「それ、合法的なんか。」

マルチナ「そこを姐さんにスカウトされたのです。酒場の看板娘では合法的に殴るのも限界があります。
     ここなら正義の名のもとに海賊や魔獣を殴れます。」

ジュアン「ふ、ふーん。」

マルチナ「でも、悪い人以外は殴りたいと思っていませんよ?」

ジュアン「悪い人の判断は君なんだよね?」

マルチナ「はい!!」

ジュアン「こういう正義が一番怖いな……。」


チャプター14


アルメイダは船長室で物思いに耽っていた。
夢ノ国の海軍とは名ばかりで実際は各国からの寄せ集めが有志で軍と名乗っているに過ぎない。
黒キ者の侵攻が激化し、海はより危険度を増した。

アルメイダ「私達がしっかりしなければ、海は護れないんだ……。
      そのためには資金が必要だ。
      魔ノ海域も誰かが突破する事で、不安定な場所では無くなる……。
      私達、海軍がそれを成し遂げなければならない。
      海賊などではなく、私達の手で!!」

ジュアン「キャプテン姐さん。前方に宝島と思しき島を発見しました!!」

マルチナ「しました!!うずうずしおしおが周りを取り囲んでいます。」

アルメイダ「わかった。全員に準備をさせろ。」

ジュアン「アイアイサー!!」

マルチナ「アイサー。」


チャプター15


サッチ「キャプテン勇者。宝島が見えてきましたぜ。」

ハムト「まじかニャ。これでURオーブを狙いまくれるのニャ。」

メアリ「でも、目の前の渦潮が曲者ね。」

サッチ「そこは、あっしと船員の操船技術にまかせてくだせえ。」

ハムト「頼もしいのニャ。サッチは使えるのニャ。」

メアリ「危なくなったら、私も船を押すよ。」

ハムト「メアリが押すと転覆しそうなのニャ。」

サッチ「やっと宝島に戻ってこられたかぁ。財宝に夢を巡らす者達のおかげだなぁ。」


チャプター16


あなた達は、荒波と渦潮の海を乗り越え無事宝島へ上陸を果たした。

ハムト「危なかったのニャ……。今回のイベントは死にかける事多いのニャ。
    流石に海に落ちたら溺れ死ぬのニャ。
    でも、遂に宝島へ辿りついたのニャ!!」

サッチ「これもキャプテン勇者のおかげでさあ。」

メアリ「私、人魚だから陸が苦手なのよね。」

ハムト「メアリには船を護ってもらいたいニャ。」

メアリ「確かに、また海賊に取られたら困るしね。」

サッチ「魔獣に襲われても困りまさあ。」

メアリ「わかったわ。ここは絶対死守するよ!!」

ハムト「サッチ。財宝は何処にあるニャ。」

サッチ「何処かに財宝を埋めた洞窟があるはずでさあ。」

ハムト「よーし。キャプテン勇者。探すのニャー!!」


チャプター17


アン「ほら。さっさと歩く。あんた、一度はクロヒゲの財宝に近付いたんでしょ。」

ジャック「ああ、だが気を付けないとダメだ。
     財宝には呪いがかかっている。自分の夢。つまり欲望に強く反応するんだ。」

アン「夢ノ国には意思の力が反映されるって事ね。」

ジャック「俺が昔、財宝の近くまで行った時には仲間割れが起こったんだ。」

アン「あんたは、よく無事に帰って来れたわね。」

ジャック「俺は怖くなったんだよ……。殺し合いまでして叶えたい願いなんて俺にはなかったのさ。」

アン「……。それが黒キ者が言っていた。財宝に飲まれるって事ね。」

ジャック「お前には殺し合いをしてまで叶えたい夢があるのか?」

アン「わからない。まぁ、裏切りそうなのはあんたしかいないし。
   あんたなら良心は痛まないかな。」

ジャック「我が娘ながら酷い……。」

アン「あんたの娘だからだよ。」


チャプター18


アルメイダ「何とか辿りついたね。」

ジュアン「上陸の準備は出来ています。」

アルメイダ「島に拠点を作るよ。」

マルチナ「拠点ですか?」

ジュアン「なるほど。拠点を作る事で島を少しでも不安定な存在から遠ざけるんですね。」

アルメイダ「察しがいいね。そういう事だ。うまくすれば神官達を援護に呼べるしね。」

マルチナ「なるほどぉ。」

ジュアン「船員には上陸の準備をさせます。姐さんはどうします?」

アルメイダ「私は財宝を探す。」

マルチナ「私も一緒に行きます!!」

アルメイダ「いや、私一人で充分だ。財宝には呪いが掛かっていると言われている。」

マルチナ「ノロイ?」

アルメイダ「人の欲望に反応する呪いさ。まぁ、財宝ってのは多かれ少なかれそんなもんさ。」

ジュアン「つまり仲間割れを防ぐために一人で行くと……。」

アルメイダ「そういう事だ。」

マルチナ「私は絶対に姐さんを裏切りませんよ!!」

ジュアン「僕もです!!」

アルメイダ「……。
      わかった。あんた達は一緒に来な。」

ジュアン「アイアイサー!!」

マルチナ「アイサー!!」


チャプター19


あなた達は岩肌にぽっかりと開いた洞窟の前に居た。

サッチ「宝の地図によるとここでさあね。」

ハムト「お宝ニャー。URニャー。ムフフのフーニャ。」

サッチ「ハムトさんはすっかり財宝の魔力に魅入られちまってますねぇ。
    ……。いや、いつもこんなもんかもしれねでさあね。」

ハムト「入るのニャー。」

サッチ「中は古代遺跡を利用した迷宮になっていやす。
    当然魔獣も出やすので気をつけてくだせえ。」


チャプター20


あなた達は、うす暗い迷宮をひたすら進んでいった。

ハムト「そういえば、サッチって何者なのニャ?随分色々な事に詳しいニャ。」

サッチ「あっしですか?」

ハムト「死にそうな目にあったばかりで、サッチがイカ人間である事もスルーしてたニャ。」

サッチ「まぁ、夢ノ国にはおかしな種族もいやすしね。人魚がいるくらいですし。」

ハムト「イカ人間は滅多に見ないニャ。」

サッチ「あっしの種族は海に済む種族でさあ。クラーケン族と言いまさあ。」

ハムト「あの船を襲う怪物ニャ?」

サッチ「そういう輩も居ますが、生憎あっしはそういうのには興味がねえでさあ。
    そんな事より、あっしは世界中を回ってみたかったんでさあ。
    夢ノ国は色々な世界と繋がっていまさあ。って事は色々な世界を見れるって事でさあ。」

ハムト「それで海賊やってんのニャ。」

サッチ「そうなりまさあね。」

ハムト「ハムトも海賊はなかなか楽しいニャ。」

サッチ「ジャックを脅す所なんかを見るにハムトさんはいい海賊になれまさあ。」

ハムト「ニャハハハ。ハムト海賊団を旗揚げしたら、サッチも仲間にしてあげるニャ。」

サッチ「そん時は是非。でも、海賊は抜け目ねえ奴らです。くれぐれも気をつけてくだせえ。」

ハムト「わかったニャ。」


チャプター21


アンの目の前には財宝が山となり絨毯となり連なっていった。
一体どれほどの時をかければ、この量の財宝を集められるのだろうか。

アン「凄い。想像以上だ……。圧倒されて何も言えない……。」

ジャック「これだけあれば慰謝料には足りそうだ。
     正直、ちょっとやそこらの人手じゃ持ち出せないのさ。」

アン「確かに。そうだ。これだけあれば海賊島は作れそうね。」

黒キ者「アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!よくここまで来たな。」

ジャック「お、お前は!!く、黒、黒……。」

アン「あんた黒キ者知らないのか!!本当アホだなあ!!」

ジャック「悪い奴だって事は知ってる。キャプテン勇者の敵だとか。」

アン「夢ノ国の支配を狙ってる奴だよ。」

ジャック「興味ない事は忘れちまうんだよなぁ。」

黒キ者「親子漫才は終わりか?」

アン「何しに来たんだ?」

黒キ者「いや、何も?俺は、ここが人の欲で喪界となるのか見に来ただけだ。」

アン「お生憎様だね。クロヒゲの財宝はあたしのもんだ。」

黒キ者「そうかな。海軍の女幹部、勇者、いかひげもいるんだぜ。お前の親父もな。」

アン「渡さない。私の夢には財宝が必要なんだ……。」

クロヒゲの財宝が淡い光を発し始める。

ジャック「まずい。これは財宝の呪いだ!!
     アン。気をしっかり持て!!財宝に取り憑かれるぞ!!」

アン「私の財宝に手を振れるなぁぁぁぁぁ!!」

黒キ者「アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!俺は何にもしてねえぜ。
    財宝の呪いに飲まれたのさ。これで、ここも終わりだな。
    じゃあな。アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!」


チャプター22


財宝の山で埋もれる様に、ジャックが血まみれで倒れていた。

ジャック「遅いじゃないか。キャプテン勇者……。」

ハムト「おっさん!?誰にやられたのニャ。」

アン「あたしの財宝に近付くな……。」

ハムト「おっさんやり返さなかったのかニャ?」

ジャック「実の娘に刃を向けられねぇ。」

サッチ「これは財宝の呪いでさあ。夢と欲望は表裏一体。
    思いが強ければ強いほど財宝の呪いの影響を受けやすいんでさあ。」

ハムト「操られているのニャ。」

サッチ「そうでさあ。ハムトさんは大丈夫そうでさあね。」

ハムト「ハムトにも夢や希望がいっぱいニャ。呪われるニャ。」

サッチ「特に大きな目標が無い人には影響が無いのでさあ。」

ハムト「なんニャ。ハムトが適当に生きてると言いたいのかニャ……。」

ジャック「俺の娘を止めてくれ。キャプテン勇者……。」


チャプター23


アン「はっ!?あたしは一体……。」

ハムト「気付いたかニャ。」

サッチ「財宝の呪いに操られていたでさあ。」

アン「呪いに操られるなんて情けない……。海賊女王になるには器量が足りないって事か……。」

サッチ「仕方ないでさあ。クロヒゲはここに財宝を集めすぎたんでさあ。
    その影響で、ここ一帯に負の感情が集まってしまったんでさあ。
    クロヒゲもそんなつもりはなかったと思いまさあ。」

アン「財宝はキャプテン勇者に譲るわ。」

ジャック「お、俺の慰謝料も……。」

ハムト「おっさん。死にかけの癖に欲の皮つっぱってるニャ。」

アン「おい、親父。あたしに刃を向けなかったからって恩には着ないわよ。」

ジャック「わかったよ。お前には親らしい事は出来なかったからな。」

ハムト「ここまで幽霊船員を連れてくれば運び出されるニャ?」

サッチ「そうでさあね。あとは魔獣に気をつければ大丈夫でさあ。」

ハムト「一度戻るニャ。」

アルメイダ「キャプテン勇者。何処に行こうって言うんだい。」

マルチナ「いうんだい。」

ジュアン「ジャック、アンは海賊です。こちらに引き渡してもらいます。」

ハムト「まだ海軍が残っていたニャ。」

サッチ「アルメイダにも夢があるって事は……。」

アルメイダ「私の財宝!!」

ハムト「やっぱり呪われたニャ!!」

ジュアン「姐さんの財宝!!」

マルチナ「姐さんの財宝!!」

ハムト「海軍全員呪われたニャ!!」

アン「あたしはマルチナを抑える。」

ジャック「俺はジュアンを!!」

ハムト「キャプテン勇者はアルメイダを頼むのニャ!!
    ハ、ハムトは応援するのニャ!!」


チャプター24


あなたの一撃で、アルメイダから呪いの気配が消え失せた。

アルメイダ「うーん。私は一体……。」

ジュアン「はっ。なんで僕はおっさんと殴り合っているのだ。」

マルチナ「女海賊にぱんち、正義ぱんち!!」

アン「もう終わりだっての!!」

アルメイダ「キャプテン勇者。迷惑をかけたな。」

サッチ「皆さん。まだ終わりじゃあありやせんぜ。」

ハムト「どういう事ニャ?」

財宝の周りに何匹もの魔獣が出現し始めた。財宝を護る亡者達である。

サッチ「財宝を望む負の感情の塊でさあ。」

アン「こうなったら……。」

ジャック「海賊も……。」

アルメイダ「海軍もないね。皆、力を合わせて、切り抜けるよ!!」

マルチナ「ぬけるよ!!」

ジュアン「アイアイサー!!」

ハムト「財宝は目の前ニャ!!キャプテン勇者頑張るニャ!!」


チャプター25


あなた達は力を合わせ全ての亡者を倒した。

ハムト「これで全員倒したのニャー。」

ジャック「いやあ。良かった。海賊も海軍もなく。みんなで力を合わせた。
     素晴らしい。これこそがお金で買えない経験だ。と言う事で皆で山分けをしよう。」

アン「何言ってるんだ!!あたしには海賊女王って夢が!!」

アルメイダ「私にも海軍を増強し司令官の夢が!!」

アン「……ハッハッハッハ!!」

アルメイダ「……アッハッハッハ!!」

アン「今はいいや。これはクロヒゲの財宝。あたしのじゃない。」

アルメイダ「そうさ。自分の力で勝ち取った物でもない。
      貰う権利があるとしたら……。」

アン「キャプテン勇者。ただ一人だね!!」

ジュアン「まぁ、クロヒゲの財宝に辿りつけただけでも充分なお手柄ですよ。」

マルチナ「私はいつだって姐さんについていきます。」

その時、財宝の間に地鳴りが響いた。

サッチ「しまった。戦いの影響で、洞窟がもたねえでやす!!」

洞窟の壁が崩れ、海水が勢いよく吹き出し始めた。

ハムト「そんニャ!!財宝は目の前ニャ!!お約束な展開はやめてニャ!」

アン「死んだらおしまいだ。逃げるよ。」

アルメイダ「生きてさえいれば夢は追い続けられるからね。」

サッチ「皆さん、あっしの足に捕まってくだせえ。」

サッチは自分の触手を伸ばすと全員に掴ませた。

ハムト「サッチ。クラーケン形態なのニャ!!ちょっとキモイけど助かるニャ。」

サッチ「あっしに捕まっていれば溺れる事はありやせん。さあ、行きますよ!!」


チャプター26


あなた達は海水で沈む洞窟をサッチの助けで逃れる事が出来た。

アン「助かった……。」

アルメイダ「危なかったね。」

沖には神官たちの船が見えた。

テラス「勇者様ー!!大丈夫~~??」

ルー「ご無事ですかー!!」

トト「これが宝島か興味深い。」

アレウス「まだ界蝕の影響があるな。至急、結界とオーブの準備をしなければ。」

神官達の船が海軍と合流し、作業を開始し始めた。

ハムト「あいつら本当に遅いニャ。財宝沈んでしまったニャ。」

アルメイダ「でも、此処を新たな海軍の拠点には出来そうだね。」

アン「あたしはそろそろ消えるよ。」

アルメイダ「まぁ、海賊と仲良くしてちゃ問題あるからね。今度会うときは容赦しないよ。」

アン「望む所だ。」

メアリ「うんうん。熱い友情だね。心配だから迎えに来たよ。キャプテン勇者。」

アルメイダ「(誰?)」

アン「(さあ?)」

ジャック「それじゃあ俺もそろそろ。」

ジュアン「あなたはダメですよ。脱走犯なんですから。」

マルチナ「逃げてもいいですよ。ぶちのめす口実がつくので。」

ジャック「ひえええ。わかった。わかったよ。
     (ふん。またいつか脱走してやらあ。俺にはクロヒゲのオウムがいるんだからな)」

オウムは、不意に羽ばたくとジャックの肩から空へ舞い上がった。

ハムト「飛んで行ってしまったのニャ……。」

アン「きっとクロヒゲの下へ帰ったんだよ。」

アルメイダ「財宝も沈んだしね……。」

入江からゆっくりと幽霊船が離れ始めた。

ハムト「ニャニャ!!幽霊船が離れていくニャ!!誰が船長なのニャ!!」

ジュアン「そ、それに財宝が山ほど積まれています!!」

マルチナ「えー、海に沈んだんでしょ?」

アルメイダ「幽霊ならば引き上げることが出来る……。」

アン「クロヒゲの幽霊って事か?」

メアリ「クロヒゲ?いかひげじゃないの?」

ハムト「は?ニャ?」

メアリ「大海賊のいかひげサッチって有名じゃない。」

ハムト「そういえばサッチいないニャ。やられたニャ!!」

アン「じゃあ、あのイカがクロヒゲだった訳!!」

アルメイダ「噂って言うのはあてにならないわね……。」

ジュアン「じゃあ、いかひげは自分の財宝を取り戻すために利用したってのか。」

アン「黒キ者と賭けをしてたのもサッチだったのね。」

アン「キャプテン勇者と神官を呼び寄せて魔ノ海域を浄化させるために……。」

ジャック「まいったぜ。流石いかひげ……。」

アン「あたし、いかひげを追う。追ってこいって言ってるんだよ!!」

アルメイダ「そうだね。あの財宝を求めてさらに海は荒れるね。」

メアリ「うーん、状況はまったく理解出来てないけど。浪曼と冒険だね!!」

ハムト「サッチめー!!いつか絶対財宝を取り返してやるのニャ!!
    (ま、まぁちょっとだけ楽しかったけどニャ)」


チャプター27


ジャックから離れたオウムは幽霊船へと飛んでいった。

サッチ「おう。よく戻ったな。」

オウムはサッチの肩に停ると「いかひげ」と鳴いた。

サッチは船長の帽子を取り出すと優雅に被った。

サッチ「ハムトさん。だから海賊は信用しちゃあいけねえって言ったじゃないでさあ。」

黒キ者「アッアッアッハッハッハッハヒイ!!」

黒キ者「大したもんだぜ。キャプテンいかひげ。賭けはあんたの勝ちだ。」

サッチ「界蝕は防ぐ。財宝は取り戻す。まぁ、元は俺のだしな。」

黒キ者「人の噂ってのはあてにならねえな。いかひげがクロヒゲと言い換えられちまうとは。」

サッチ「海は俺達の物だ。あんたの好きにはさせねえ。
    これで、財宝は実在するって事が夢ノ国に知らしめる事が出来た。界蝕で沈む前にな。
    この財宝を求めて、冒険に出る輩が増えるってもんさ。」

黒キ者「海はより確かな存在になるって事か。それだけつまらない場所になるかもしれないぞ。」

サッチ「海を知り尽くす事なんざ出来ねえさ。」

黒キ者「まぁ、いい。これからどうするんだ?」

サッチ「そりゃあ、この財宝を何処かに隠さねえとな。この「いかひげ」の財宝をな。」

黒キ者「勇者を騙したあんたは正真正銘おたずね者だ。俺と同じ「敵」ってやつだ。」

サッチ「そこが面白い所じゃねぇか。これで退屈しねえで済む。」

黒キ者「!クククッ
    アッアッアッハッハッハッハヒイ!!あんたは楽しい奴だぜ。
    また会おうぜ。キャプテンサッチ。」

そう言うと黒キ者の気配は掻き消えた。

サッチ「今回の冒険は本当に楽しかったぜ。キャプテン勇者とハムトさん。
    あんた達との旅が、俺にとって一番の宝物だ。
    また、俺の財宝を探しにきてくれ。次はもっと凄い冒険をしようぜ……。」

夕陽が落ちると共に水平線にサッチの船は消えて行く。
サッチの歌う海賊の歌があなたの耳に微かに聞こえた様な気がした。
また、あなたの心の羅針盤が海の冒険や財宝に向く時が来るかもしれない。
その時は、あの伝説の海賊いかひげのサッチが迎えにくるだろう。

幻蒼海の魔影 完

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