シナリオ 光闇の双月 後編
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チャプター 1
太陽は黒キ月に喰われた。
金環月食の様に、黒キ月を陽光の指輪が覆う。
それは、黒キ月の王冠の様に不気味に揺らめいていた。
王都の城の地下神殿。聖王の間で、ルーは一人祈っていた。
ルー「聖王様……。お力をお貸し下さい……。」
勇者が現れてから、聖王が姿を現す事はなかった。
数多の困難、危機が夢ノ国を襲った。
月が喪界化する。という未曾有の危機に際しても沈黙を守る聖王。
ルー「やはり、私達だけで解決しなければならないのですね。」
ルーは聖王が司る秩序の力を感じていた。
ルー「祈るだけが私の仕事ではないですものね。」
ルーは一人。地下神殿から出て行った。
聖王「……。」
誰も居なくなった地下神殿に聖王の姿が現れた。
ずっと前から、その場に居たかの様に佇み、虚空を見上げる聖王。
地下からは見えないはずの黒キ月を、視界に捉えている様に見えた。
チャプター 2
あなたは転送装置で王都へと戻ってきていた。
始めて入るトトの工房では鉄を打ち付ける音が響き続けていた。
ハムト「フニャー!!トンテンカントンテンカンうるさいニャ!!」
オキナ「トトさん。こんな形でいいんすか?」
トト「うん。ありがとうー。」
テラス「斧で加工しちゃうんだねぇ。」
オキナ「これは斧じゃないんす。TAKE-AXっていうベースなんす。」
テラス「楽器?楽器なの?」
オウナ「カグヤっちとツキカゲっちが乗ってきたロケットから作ったのよ。」
アレウス「東方には腕の良い鍛冶職人が多くいると聞くしな。」
オキナ「ツアーで移動する時に遭遇する魔獣対策に、斧として使える様にしてるんす。」
トト「東方はシ凶の影響力が強いからね。」
アレウス「転送装置がなければ行くのも困難だ。」
ハムト「出来るまでは何もしなくていいニャ?」
テラス「勇者様には、王都周辺の魔獣を倒してくれると助かるよ。」
トト「月の影響で魔獣が増えてしまったんだよ。」
アレウス「結界を強化しているから王都の内部には入ってこれないがな。」
トト「魔獣が増えると界蝕が起こりやすくなるんだ。」
アレウス「勇者よ。すまないが、よろしく頼む。」
ツキカゲ「私もお供しよう。勇者よ。」
チャプター 3
王都の一角にロケットの発射台が設置されていた。
トトとオキナ。またたくさんの職人の手によって作られたロケット。
天を突くようにすらりと伸び、青く光るフォルム。
無駄の一切ないデザイン。その姿はまるで……。
ハムト「竹じゃニャいか!!」
トト「元の素材を充分に生かし、無駄の無いデザインにしたんだよ。」
アレウス「性能には問題はない。私の結界で強度も申し分ない。
さらに、このロケットは結界にもなっている。
私の結界で少しでも黒キ月の力を落とすのだ。」
ルー「私が動力部のオーブを作りました。」
テラス「テラスはね。うーん。お、応援したかな……。
でも、ロケットが月に到着すれば月まで交信術が届く様になるよ。」
ルー「今はカグヤさんの結界で交信術も千里眼も届きませんからね。」
ハムト「ニャンだか心配ニャ。そう言えば夢ノ国の宇宙空間ってどうなってるニャ?」
アレウス「夢ノ国の宇宙は概念の海と言われている。
勇者の世界の宇宙と少し違うはずだ。」
ハムト「確かに、月の世界では普通に生きてられたニャ。
でも、宇宙空間は別ニャ。概念の海とか厨二な説明には誤魔化されないニャ。
月から来た時は転送装置と騙されたから聞いてる暇なかったのニャ。
事故ったらどうなるのニャ?窒息するのかニャ?」
ルー「……。」
テラス「……。」
ハムト「まさか、お前ら神官も宇宙の事はよくわかっていないとか言わニャいよね?」
トト「……。」
ハムト「全員、目を逸らすんじゃニャいニャー!!」
トト「いや、元々ボクらファンタジーの住人だし……。」
ハムト「トトォ!!ハムトの目、見て言うニャ!!」
トト「せ、設計上問題ないよ。結界もオーブもあるしね。」
ハムト「問題ないって一番信用ならないニャ。」
オウナ「大丈夫だってぇ。ハムトっち。神官様が作ったものだしぃ。」
オキナ「自分も神官様を信じているっす。」
ツキカゲ「もし何か事故があった場合は、私が何とかしよう。」
ハムト「兎仮面も何か特殊な力があるニャ?」
ツキカゲ「私も若干だがカグヤ様と同じ様に、月の力が使えるのだ。」
ハムト「うーん、ま、まぁこれしか手段がニャいしニャ。しょうがニャいニャァ。」
アレウス「勇者よ。念のため、貴殿の装備に特別な結界をかけておこう。
宇宙で敵に襲われた時に船外で自由に行動できるものだ。」
ハムト「ニャンと。それは便利ニャ。」
トト「後は最終調整だけだよ。」
ツキカゲ「勇者よ。共に行こう。」
チャプター 4
王都にアレウスのカウントダウンが響く。
あなたの隣で操縦桿を握るオキナの額には汗が滲んでいた。
ハムト「勇者。いよいよニャ。……。今気づいたけど、これ手動なのかニャ。」
オキナ「自分、この日のために操縦士の訓練を受けたっす。」
ハムト「いや、ロケット作り始めて対して時間経ってないニャ。」
オウナ「だから大丈夫だってハムトっち。神官様が作ったものだからぁ。」
ハムト「そうやって偉い人が作った物を鵜呑みにしちゃダメなのニャ!!
月マンが死んだの見てなかったのかニャ!!
レジェンドワールド初の死者なのニャ。洒落にならないニャ。」
オキナ「自分、絶対死なないっすから。」
ハムト「そういう死にフラグっぽいのやめニャ!!」
オウナ「流石、OKINAだねえ。」
ハムト「ゆ、勇者。やっぱり降りるのニャ。」
アレウス「3、2、1、0。」
アレウスのカウントは無情にも0を告げた。
ロケットは轟音と煙を吐き出しながら、王都から飛び立つ。
テラス「あの煙とか音とかって何?動力はオーブだよね?」
トト「うん。あれはロケットっぽさの演出かなー。」
テラス「じゃあ、特に意味はないの?」
トト「ロケットっぽさって意味はあるよ。」
テラス「……それが意味がないって言うんじゃ……。」
ルー「勇者様。お願いします。月を元に戻して下さい。」
チャプター 5
あなた達は無事に夢ノ国を飛び立った。
ハムト「奇跡ニャ。無事飛び立ったのニャ。」
オウナ「OKINA、その光ってるのは何?」
オキナ「レーダーだよ。姉貴。」
ハムト「赤く光ってるのニャ。」
オキナ「赤く光ってる時は敵がいるってトトさんが言ってたっす。」
ロケットの周りに界蝕が起こり、魔獣が出現しようとしていた。
ハムト「早く言うニャ!!勇者、スタンバってニャ!!」
オキナ「待ってくださいっす。こんな事もあろうかと!!」
オウナ「なになに?」
オキナ「トトさんがレガシーボムミサイルを積んでおいてくれたのです!!
レガシーボムミサイル発射!!」
レガシーボムミサイルは煙を飛行機雲の様に吐きながら飛ぶ。
魔獣は咄嗟に回避を試みるが、ミサイルは逃げる魔獣を追尾し、爆散した。
ハムト「やったニャ。トトの奴やるニャ。ニャンで煙が出るかわからニャけど……。」
オウナ「OKINA、どんどんくるよ。」
オキナ「レガシーボムミサイル一斉発射!!」
大量のレガシーボムミサイルがロケットから一斉に発射された。
大量のレガシーボムミサイルは魔獣を界蝕ごと吹き飛ばした。
ツキカゲ「すごい物を作れるのだな。地上の神官は……。」
ハムト「これで月まで安心ニャ。むしろこれだけで月を攻略出来るんじゃニャい?」
オキナ「無理っす。」
ハムト「ニャンで?」
オキナ「今ので全弾使い果たしたっす。」
ハムト「は?ニャ?
ゲーム的に無限に撃てたりしないのニャ?シューティングゲームの常識ニャ。」
オウナ「そんな都合良い訳ないじゃない~。」
ハムト「なんか、読モギャルに言われるとむかつくニャ。」
ツキカゲ「やはり、私と勇者で魔獣を倒すしかないな。」
ハムト「ツキカゲもアレウスの結界かけてもらったのニャ?」
ツキカゲ「私の仮面にも同じ様な力があるのだ。」
ハムト「ハムトのパーカーみたいニャ。便利アイテムニャのね。」
ツキカゲ「それでは、勇者行こう。」
チャプター 6
月ノ都は静寂に包まれていた。
住民たちは息を潜め、新たな月ノ女王の動向を見守るしかなかった。
まだ、何も起こらないが、いつ界蝕に月が飲み込まれるかわからないのだ。
黒く変貌した月。
月ノ都の中央に立つ尖塔『光月ノ妃』。
その頂上にカグヤは居た。
カグヤ「私は夢ノ国に帰りたい……。
地上でツキカゲとオキナとオウナと一緒に暮らしたい。
そう……。月と夢ノ国を一緒にしてしまえばいいんだ。
陽の光でさえ月は喰らう事が出来る。
私は月ノ女王。出来ない事はない……。」
月は、喪界に侵食されながら、徐々に夢ノ国へ近づき始めた。
チャプター 7
オキナ「そろそろ月面へ着陸出来そうっす。」
オウナ「がんばれOKINA。」
ハムト「オウナって応援してるだけじゃニャい?」
オウナ「そういうハムトっちも応援してるだけじゃない?」
オキナ「姉貴の応援には魔力が込められているんす。」
ハムト「ニャニ?」
オキナ「味方の志気や能力を上げれるんすよ。」
オウナ「意外と癒し系って言われるよ。」
ハムト「ハムトも癒し系ニャ。可愛さでも上ニャ。」
その時、機体が大きく揺らいだ。
ハムト「ニャニャ!!何事ニャ!!」
オキナ「せ、制御が効かないっす。何とか、元に戻すっす……。
TAKE TRUEuuuuuu!!」
オウナ「頑張れ、OKINA!!」
ツキカゲ「月が動いているせいで月の重力のバランスが崩れている。
このままでは月面に激突する。」
ハムト「ギニャーーーーー!!やっぱり、死ぬのニャ!!」
オキナ「自分が、最高のパフォーマンスでTAKE TRUEするっす。」
オウナ「OKINA、マジ落ち着いて!!」
機体の振動は激しくなり、速度は増す。
ツキカゲ「勇者よ。月の砂の入った砂時計を私に貸してくれ。」
ハムト「砂時計で死ぬまでを計るのかニャ……。」
あなたが砂時計を渡すと、ツキカゲは兎の仮面を外した。
ツキカゲは砂時計を叩き割ると、中から月の砂を取り出した。
月の砂は地面に落ちる事なく、ツキカゲの周りを蛍の様に舞いだした。
ツキカゲ「月の砂よ。裏界ノ月の主を導きたまえ。」
ハムト「ツキカゲ、女だったのニャ!!」
ツキカゲの周りの砂の光が増すごとに機体は安定を取り戻しはじめた。
オウナ「流石、ツキカゲっち。」
ハムト「一体なんなのニャ。」
オキナ「勇者さん、もう大丈夫っす。月に到着っすよ。TAKE TRUE。」
チャプター 8
あなた達は無事に月へ着陸する事が出来た。
ハムト「月は二回目だけど、全然感慨深くニャいニャあ。
ツキカゲの謎のパワーって何ニャ?
オッキーナも読モギャルも知ってたみたいだし。」
ツキカゲ「勇者、ハムト。私は、まだ正体を明かす事は出来ない。
しかし、黒キ者に操られたカグヤを解放する術を知っている。」
テラス「勇者様、大変だよ!!」
ハムト「なんニャ。また何かあったのニャ?」
テラス「月が夢ノ国に近付いてるんだよ!!」
オキナ「月が夢ノ国に!?」
オウナ「たいへ~ん。な事はわかるけどどうなるの?」
ハムト「月がぶつかると地上は大変な事になるニャ!!ていうか滅ぶニャ。」
オキナ「TAKE TRUE……。」
ハムト「しっとり言うニャ。オッキーナはさっきの衝撃で少し壊れ気味ニャ。」
ツキカゲは月ノ都とは反対の方向へ歩き始めた。
ツキカゲ「勇者よ。こちらへ来てください。」
ハムト「兎仮面。そっちは月ノ都じゃないニャ。」
オウナ「ハムトっち。いいから今はツキカゲを信じてあげて。」
ハムト「何か策があるじゃろうニャー……。もう振りまわされっぱなしニャ。」
ツキカゲ「月の裏側に行きます。
誰にも知られず陽の光も当たらぬ場所へ。」
チャプター 9
月の裏側はかつて一度も陽の光が届いた事はない。
また、その姿を夢ノ国の住人が見る事はなかった。
月の裏側は存在しながらも誰にも認識される事が無い場所なのだ。
進めば、進むほど闇は深く濃くなっていった。
ツキカゲ「月には2つの顔があります。
夢ノ国から見え、月ノ民が暮らす世界光ノ月。
光差さぬ静寂と暗黒の地。月の裏側の世界闇ノ月。
光ノ月を治める光月ノ女王。闇ノ月を治める闇月ノ女王
どちらが欠けても月は確かな存在になる事はないのです。
黒キ月に侵食された光ノ月を救うには、闇ノ月の力が必要なのです。
優しく、静寂に満ちた闇の力が……。」
ハムト「それはどうするニャ?」
ツキカゲ「闇月ノ女王に会いに行きます。」
オウナ「月ノ女王って2人で1つなんだってぇ。カグヤっちが言ってた。」
オキナ「カグヤだけでは完璧な女王にはなれないんす。」
ハムト「だから大丈夫って言ってたのかニャ。
でも、黒キ者は知らないのニャ?」
ツキカゲ「闇と黒キ者は近しい存在。闇を隠すならば闇の中へ。
闇ノ月の女王は黒キ者も探知しにくい存在なのです。」
ハムト「そうニャ……。神官も知らなかったニャ。」
ツキカゲが闇月ノ陽の入口に立ち、黒光りする扉に手をかざす。
チャプター 10
ツキカゲ「月は夢ノ国から遠いため聖王様や神官様の力が届きにくい場所です。
そのため自衛が必要だったのです。
もしもの時に考え出したのは闇ノ月の存在を隠す事。
存在しない者にする事でした。」
ハムト「確かな存在にならないと消えちゃうんじゃニャいの?」
ツキカゲ「女王には人並み外れた精神力が必要です。
そのため生まれてから、ずっと修練に明け暮れています。
光月ノ女王の一族だけが闇ノ月の一族の事を知っています。
光がなければ、影は差さず、闇に意味はなくなるのです。
例外として、オウナとオキナだけは知っています。」
オキナ「TAKE TRUEのメンバーにも言っていない。」
オウナ「カグヤっちとツキカゲっちはズッ友だもん。誰にも言わないよ。」
ツキカゲ「月が喪界になってしまっては意味はありません。
不本意ながら闇月ノ女王の力を使うしかないのです。」
ハムト「闇ノ月の女王に会えば月は止まるのニャ?」
ツキカゲ「ええ必ず止まります。」
ハムト「勇者、ツキカゲを信じて行くしかニャいのニャ。」
チャプター 11
突如、あなたの前に、巨大な尖塔が現れた。
尖塔の表面は、黒曜石の様に鈍く艶やかな光を放っていた。
ツキカゲ「これが闇ノ月の女王が住む場所。闇月ノ陽です。」
オウナ「真っ黒だねぇ。」
オキナ「敵はいるんすか?」
ツキカゲ「塔を護る魔獣が出現します。
闇月ノ陽は、普通人の目で見る事は出来ません。
闇月ノ女王の意思か、勇者だけが、その姿を捉える事が出来ます。」
ハムト「流石、ハムトの相棒勇者ニャ。
それにしても誰もいないのニャ。闇ノ月って住民いないのニャ?」
ツキカゲ「闇ノ月には住民はいません。黒キ者に存在が見つかっては困るからです。」
オキナ「存在を知ってるのはカグヤの一族だけなんす。」
ハムト「闇月ノ女王って、一人なのニャ。可哀想なのニャ。
勇者とハムトが友達になってやってもいいのニャ。」
オウナ「そうねぇ。勇者っちとハムトっちで友達になってあげるといいよ。」
ツキカゲ「急ぎましょう。闇月ノ陽の存在はやがて黒キ者に気付かれるでしょう。」
チャプター 12
漆黒の闇。概念の海。夢ノ国の宇宙に黒キ者は漂っていた。
黒キ者「月はやがて夢ノ国に落ちるだろう。
黒キ月は夢ノ国全土を飲み込み喪界と化す。
勇者が、この状況をどう覆すか見ものだな。
勇者の反応が消えている。別の世界へ飛んだか……?
さあ、急げよ。聖王が見ているぜ。
アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!」
チャプター 13
闇月ノ陽の内部は無限の回廊の様に入り組んでいた。
あなた達はツキカゲの案内で頂上を目指す。
黒曜石の螺旋階段を昇りきると、視界が開けた。
祭壇と玉座が向かい合わせに配置された大きな部屋が現れた。
部屋の中央は落ち窪み、巨大な水鏡が風も無いのに揺らめいていた。
水鏡には夢ノ国が映されていた。
部屋を照らす光は夢ノ国から発せられた物だった。
ハムト「おーい、女王ー!!何処にいるニャー!!月が大変なのニャー!!
誰もいないニャ。ご飯かニャ。寝てるのかニャ。」
ツキカゲ「此処には誰もいません。ずっと前から誰も……。」
ハムト「は?ニャ?ここまで来て何言ってるニャ。」
ツキカゲ「私の代で、女王の間に来る事になるとは……。」
ハムト「どういう事ニャ。」
ツクヨミ「ツキカゲは仮の姿。私が闇月ノ女王ツクヨミです。」
ハムト「ニャ、ニャンだってーーーー!!」
オキナ「TAKE TRUEな事実だろ。自分も初め聞いた時は驚いたっす。」
オウナ「カグヤっちは光月ノ女王。ツキカゲっちは闇月ノ女王ツクヨミなのよ。
光月ノ女王の護衛が闇月ノ女王とは思わないよね。」
ツクヨミ「闇月ノ女王の一族は代々、光月ノ女王に表向き仕えていたのです。
私達の代で、黒キ者の攻撃が強くなり、2人で夢ノ国へ避難したのです。
私達は血の繋がった家族の様に暮らしてきました。
私とカグヤの両親は既に亡くなっています。月での戦いや病でです。
その時から、私達は姉妹の様に過ごしてきました。
そして、女王としての宿命を理解出来るのは、お互いだけ。
お互いが心の支えだったのです。
夢ノ国に逃げ、私とカグヤは女王の宿命から解放された気がしました。
オウナさんとオキナさんは、私達を女王として扱いませんでした。」
オキナ「ツキカゲとカグヤはファミリーっすからね。」
オウナ「そうよ。ズッ友よ。」
ツクヨミ「これが普通の生活なんだ。カグヤは私より強く感じていたようです。
ずっと、ずっと楽しく暮らしていたいと。
こんな事件が起こった以上、私も仮面を捨て去る決意をしました。
カグヤを助けるため、私は闇月ノ女王としての使命を受け入れます。」
ツクヨミは静かに両手を広げた。
水鏡が波立つと月を映し出した。
ツクヨミ「闇ノ月の女王が命じます。
月よ……正しき満ち欠けの位置に戻り、静寂の闇夜を照らしなさい。」
ツクヨミの身体は淡く光を放ち始めた。
闇月ノ陽の尖塔も漆黒の闇の中で光を放ち始めた。
それは、闇夜に浮かぶ月の様に神秘的な姿であった。
ツクヨミの祈りに呼応して、水鏡に映し出された月は虚空で静止した。
ツクヨミ「勇者様、私の力では止めるのが精一杯の様です……。」
オウナ「ツキカゲっち。あ、今はツクヨミっちね?すごーい。」
ツクヨミ「しばらくは時間が稼げます。
やはりカグヤを直接助けるしか手はないようです。」
オキナ「月ノ都に乗り込むしかないっすね。」
ハムト「前は、凱旋パレードだったのに、今度は殴り込みニャ。」
ツキカゲ「勇者よ。行きましょう。」
ハムト「兎仮面に戻った。」
ツキカゲ「闇月ノ女王の正体は極力隠したほうが良いのです。」
チャプター 14
乗り捨てられたロケットは、月面で静かに佇んでいた。
遠目から見ると、月面には不似合いな青竹が生えているかの様であった。
アレウスの結界が張られているため、魔獣が近付く事は出来ない。
音もなく、静かに明滅を続けるロケット。
明滅は次第に早くなり、その光は、生き物の鼓動の様に見えた。
チャプター 15
あなたは再び月ノ都へと戻ってきた。
月ノ都は静まり返っていた。
人々は息を潜め事態の収拾を待つしかない。
魔獣に対して、人々はあまりにも無力だからだ。
光月ノ妃に向かって、幅の広い道が敷かれていた。
いつもは人々が行き交い、賑わっている街路だ。
ハムト「みんな隠れているニャ。」
ツキカゲ「あまりに静かですね……。」
オキナ「カグヤは無事だといいんすけど。」
オウナ「無事に決まってるじゃない。今は操られてるだけよ。」
オキナ「魔獣も少ないのも気になるっすね。」
オウナ「カグヤっちを助けるの楽しそうね。」
ハムト「ニャンだか嫌な予感がするニャ~。」
チャプター 16
青く、冷たい光が、あなた達を照らした。
光月ノ塔から、一人の男が歩いてくる。
D・ムーン「フッ……。」
その足取りは優雅で自信に満ち溢れていた。
ハムト「つ、月マン!!生きていたのニャ!!」
オウナ「カンドラっち。生きてたんだ。良かったぁ。」
ハムト「やっぱりイロモノキャラは死なないと思ったニャ。イロモノ補正ってやつニャ。」
オキナ「そいつに近づいちゃダメっす。」
ハムト「なんでニャ?」
オキナ「そいつ、まっすぐ歩いているんす。ムーンウォークじゃない!!」
ハムト「ニャニャ!?」
D・ムーン「フッ……。流石、TAKE TRUEのパフォーマー。
漆黒の闇を照らす静寂の青。
俺の名は、ブルー・ザ・ダーク・ムーン……。
D・ムーンと呼んでもらおうか……。」
オウナ「カッコ……良くはないよ……。」
ハムト「文字だけではお伝え出来ニャいけど無駄にイケボニャ……。
えーと、ダークヒーロー版月マン?」
D・ムーン「何か勘違いしているようだな。俺は貴様らを抹殺しに来たのだ……。」
ツキカゲ「おそらく、黒キ者がカンドラの情報から作ったのではないかと。」
D・ムーン「ご名答!!だが私の力はカンドラの30倍以上だ。」
ツキカゲ「勇者よ。先にカグヤを助け出してくれ。」
オキナ「此処は、自分らが引き受けるっす。」
オウナ「まかせてよ。」
D・ムーン「おっと、俺は貴様ら雑魚には興味がない。
俺は黒キ王が一目置く勇者と戦いたいのだ!!」
ハムト「おい、偽月マン。ジャーマネのハムトさんを通さずに勝手に戦うニャよ。
兎仮面、オッキーナ、読モギャル。お前ら先に行くのニャ。
偽月マンは、勇者が倒すのニャ!!」
D・ムーン「勇者よ。青き月光を柩代わりに逝け……。」
チャプター 17
あなたの一撃でD・ムーンは吹き飛ばされた。
D・ムーン「フッ……。俺も、まだ自分の力を充分に使いこなせていないようだ。」
ハムト「なんニャ!!完全に負け惜しみニャ!!」
D・ムーン「ここは一時退かせてもらおう。フハハハハハハ……。」
D・ムーンの身体は闇に溶け出し、やがて顔だけになると掻き消えた。
ハムト「そ、その消え方……、カッコイイと思ってるのかニャ……。」
チャプター 18
光月ノ妃の内部には誰も居なかった。
ツキカゲ、オキナ、オウナの三人は頂上を目指し駆けた。
オキナ「誰も居ないのは気味が悪いっすね。」
ツキカゲ「光月ノ女王の力は強大です。護衛等いりません。」
オウナ「ツキカゲっちも闇月ノ女王の力を使えるんでしょう?」
ツキカゲ「使えます。しかし、光月ノ女王と闇月ノ女王が戦う事になれば……。
月は崩壊するかもしれません。」
オウナ「それじゃあ、意味ないわね。」
オキナ「俺達はファミリーだ。ファミリーの絆に比べれば黒キ者の洗脳も吹き飛ばせる。
それが俺達のTAKE TRUE……。」
オウナ「最後のは意味わからないけど、ちょっと元気出たわ。」
ツキカゲ「そうですね。カグヤもわかってくれるはず……。」
チャプター 19
カグヤ「闇月ノ女王の力を感じる。オキナもオウナも来ているようですね。
一緒に、一緒に夢ノ国に帰りましょう……。」
光月ノ妃の最上階は吹き抜けになっていた。
カグヤは顔を上げ、吹き抜けの先を見上げた。
そこには夢ノ国が映っていた。
数多の世界が出会う約束の場所夢ノ国。
今も新しい世界と繋がっている。
オキナ「TAKE TRUE!!」
オウナ「OKINA落ち着きなよ。カグヤっち迎えに来たよ。」
ツキカゲ「カグヤ。黒キ者の力に飲まれるな……。」
カグヤ「私は、皆と夢ノ国に戻るために月を動かしたのです。
皆さんから、こちらに来ていただけるとは嬉しい限りです。」
オキナ「そんな大人みたいな喋り方は止めろ。いつものカグヤに戻ってくれ。」
ツキカゲ「カグヤ。私達には逃れられない宿命があります。
勇者様や神官様と同じ。この世界で重要な役割を担う者なのです。」
カグヤ「そんな事に納得出来ません。黒キ王は言いました。
力がある者は、その力を使い自由を手に入れて良いと。
自分のためではなく、その力を弱い者のために使う必要はないと。」
オウナ「カグヤっち。オウナはカグヤっちを、そんな事を言う子に育てた覚えはないよ。」
カグヤ「ツキカゲ……いや、ツクヨミ姉様。
私とあなたは姉妹の様に育てられました。
あなたなら私の苦しみがわかるはずです。
ツクヨミ姉様のほうが、私よりもっとお辛いはず。
誰にも顧みられる事もなく影の女王として一生を終える。」
ツキカゲ「誰かに顧みられるために生きている訳ではありません。
それに女王と知られずに生きれる分、楽かもしれません。
カグヤ……。ずっと女王として生きるあなたのほうが苦しかったよね。
あなたの悩みに気付いてあげられなくてごめんね。」
カグヤ「……ツクヨミ姉様。」
オウナ「あなた、本当はかなり前に洗脳解けてたんじゃないの?」
カグヤ「オウナっち……。」
ツクヨミ「何故、こんな事を……。」
チャプター 20
ハムト「ダーク月マンのせいで時間食ったのニャ。
まぁ、いいニャ。この塔の中は誰もいないニャ。
ひたすら上に向かえばOKニャ。」
その時、塔の内部に轟音が響いた。
振動が床から足へと伝わる。
ハムト「上で何かあったのニャ。急ぐニャ!!」
チャプター 21
黒キ者「アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!
どうだ?勇者は強かっただろう?」
D・ムーン「予想以上に……手強い相手でした。
黒キ王よ。私に更なる力をいただけないでしょうか?」
黒キ者「いいだろう。しかし、貴様が勇者と並び立てると思うなよ。」
D・ムーン「わかりました。」
黒キ者「くだらんプライドより、ちゃんと仕事してくれないと困るよ、ん?」
D・ムーン「では。私の使命は……。」
黒キ者「言っただろう。月ノ女王をどちらか殺せと。
闇月ノ女王なんてのがいるとは思わなかったがな。
どちらか1人が欠けてもダメなんだろう?
月の喪界化も随分進んだしな。さあ、勇者、間に合うかな。
アッアッアッアッハッハッハッハヒイ!!」
チャプター 22
最上階は瓦礫の山と化していた。
ハムト「ニャニャ!!大惨事なのニャ!!みんな無事かニャ!!」
ツキカゲ「ゆ、勇者様……。」
オキナ「TAKE TRUE……。」
オウナ「ズッ友だよ……。」
カグヤ「みんなには、少し眠ってもらうのです。」
ツキカゲ「あなた、洗脳が解けて……。」
カグヤ「あちしは黒キ者は嫌いなのです。
でも、女王になったら二度とみんなと普通の家族になれないのです。
それが、とっても哀しいのです。
光月ノ女王の力で月と夢ノ国を近づければいいのです。」
ハムト「それは無茶な話ニャ。」
カグヤ「邪魔するのですか?あちしはこのまま地上へ行くのです。
全力で戦えば、あちしも勇者様と戦えるのです。」
ハムト「ニャにお!!ちょっとお子様におしおきするのニャ。」
オキナ「勇者さん!!カグヤには手を出さないでくれ!!」
オウナ「いやああああ。カグヤっちを傷つけないでーーー!!」
ハムト「ちょ、お前ら親バカも大概にせいニャ。向こう本気で来るつもりニャ!!
ツキカゲ、お前は頭いいニャ。言ってやるニャ。」
ツキカゲ「勇者様!!」
ハムト「おうニャ。」
ツキカゲ「そ~っと戦ってあげてください……。」
ハムト「だってニャ……。うま~く倒してやってニャ。」
チャプター 23
カグヤは、あなたの超手加減攻撃をくらい、その場にへたりこんだ。
カグヤ「やっぱり勝てなかったのです。勇者様強いのです。もう終わりなのです。」
ツクヨミ「勇者様、カグヤのワガママを許してあげてください。
カグヤは、黒キ者に騙され、心を操られただけなのです。」
ハムト「ふん、お子様相手にマジに怒ってもしょうがないニャ。」
オキナ「ハムノ者の時はマジギレしてたような……。」
ツクヨミ「みなさん、まだ終わりではありません。」
カグヤ「ツクヨミ姉様……。」
ツクヨミ「月を元の位置に戻しましょう。私達にはその力があります。
力がある者は、その力にあっただけの責任が伴います。
その力が、あなたの望まぬ物だったとしてもです。
でも、まだカグヤには早いですよね。」
カグヤ「あちしはとんでもない事をしてしまったのです。」
オキナ「間違った事をした時は、償えばいいんだ。」
カグヤ「つぐなう?」
オウナ「やり直せばいいって事だよ。」
ハムト「気にするニャ。ハムトは気にしないニャ。」
カグヤ「あちしに出来ますか?」
オウナ「オウナがついてるよ。」
カグヤ「これが終わったら離れ離れになっちゃう?」
ツクヨミ「私は一緒ですよ。」
オキナ「考えたんだけど、俺たちが月に住めばいいんだよ。」
カグヤ「TAKE TRUEの活動はどうするのです?」
オキナ「パフォーマーは月でも出来る。
TAKE TRUEの活動は月でも出来る。
月だから、LunaTrue。いやLunaTとして活動する。」
ハムト「TAKEって竹からきてるのかよニャ。」
オウナ「元々、カグヤっちとツキカゲっちが戻る時はついていくつもりだったよ。」
ツクヨミ「オウナ……。カグヤ、月を元に戻しましょう。」
カグヤ「わかったのです。」
ツクヨミとカグヤは、手を取り、目を閉じた。
ツクヨミ「光と闇を……。」
カグヤ「一体にしましょう……。」
ツクヨミ「2つに分かれた月は、今は真ノ月へ。」
カグヤ「夢ノ月へと還るのです。」
チャプター 24
月が動き始めた。
夢ノ国に温かい太陽の光が降り注ぐ。
トト「勇者のヒト。上手い事やってくれたみたいだね。」
テラス「久しぶりのお日様だよー!!」
ルー「ありがとうございます。勇者様。」
アレウス「しかし、地上と月に大変な被害が出てしまった。
何らかの対策を打たなければならないな。」
トト「ちょっと待って……。今、千里眼で見てるんだけど……。
まだ戦いは終わっていないようだよ。」
ルー「勇者様……。どうかご無事で……。」
月の地表を妖しげな光が覆っていた。
冷たく青い光の正体は、D・ムーンの大群であった。
D・ムーン「黒キ王のお力を借り、私の分身を作り出す事に成功した。
見よ。美しき青き月を……。
月は、私の分身で覆い尽くされ……。
青キ月として生まれ変わるのだ。ハハハハハハハ。」
D・ムーンの高笑いが月面に響き渡った。
チャプター 25
ハムト「大変ニャ。偽月マンの大群がこっちに向かってるニャ!!」
ツクヨミ「私達は、ここを離れる訳にはいきません……。」
カグヤ「月を元に戻さないとダメなのです。」
オキナ「俺たちが食い止めます。」
オウナ「オウナも戦うよ!!」
ハムト「て、敵が多すぎるのニャ。
いくら勇者でも、ツキカゲとカグヤを護りながら戦うのは難しいニャ。」
ツクヨミ「勇者様の力は月ノ民も知っています。
2人の女王が揃ったのです。月ノ民も立ち上がってくれるはずです。」
オキナ「俺が先頭に立つ。姉貴、月ノ民を指揮してくれ。」
オウナ「えー、オウナはそんな事出来ないよ。」
オキナ「姉貴なら出来る。」
オウナ「そっかー、じゃあ頑張っちゃう。」
ハムト「勇者も行くニャ。」
ツクヨミ「勇者様は此処で私達を護ってくれると助かります。
奴らの狙いは、きっと私達です。
女王が1人でも死ねば月は本来の力を発揮できないからです。」
ハムト「ニャニャ……。じゃあ、勇者は此処に来た敵を倒すのニャ。」
カグヤ「みんな死んではダメなのです。
カンドラさんとは、ちょっとしか会った事はないけど……。
人が死ぬのは悲しいのです。」
ハムト「そうニャ。この戦いに勝って月マンの仇を討つのニャ!」
チャプター 26
D・ムーン「フッ……。勇者よ。再び会う日を願っていたぞ……。」
ツクヨミ「一体何処から入ったの!?」
カグヤ「気配を感じなかったのです。」
D・ムーン「俺の力は黒キ王により増している。
今の俺は、シ凶の方々の様に空間も移動出来るのだ。
勇者が残っている事も計算の内だ。
俺はお前に勝ちたいのだ。俺は戦うために生み出されたからな……。
貴様を倒し、女王を殺す。
そして、この月の王となるのだ!!」
ハムト「勇者!!偽月マンのクレーターを増やしてやるのニャ!!」
チャプター 27
D・ムーンは、次第に劣勢に追い込まれていった。
勇者とD・ムーンでは戦いの経験の差があったのだ。
D・ムーンはカンドラを元に作られてはいる。
しかし、実戦経験は、あなたに比べれば圧倒的に少ないのだ。
D・ムーン「ば、バカな、この俺が敗けるだと!?この月の王になる俺が!!
か、かくなる上は女王だけでも殺す!!」
D・ムーンは素早く身を翻し、ツクヨミとカグヤに襲いかかった。
あなたの一撃は無防備なD・ムーンの背中に致命傷を与えるであろう。
しかし、ツクヨミとカグヤも無事ではすまないはずだ。
ハムト「ヤ、ヤバイニャ!!」
ツクヨミ「カグヤ!!」
カグヤ「ツクヨミ姉様!!」
ツクヨミは、咄嗟にカグヤを庇った。
D・ムーン「闇月ノ女王か。いいだろう、貴様を道連れにしてやる!!」
その時、一条の光が降り注いだ。その光がD・ムーンの動きを止めた。
ハムト「ニャニャ!!なんニャ!!」
D・ムーン「な、何故、身体が動かん。」
満月が輝いている。月から満月が見えるはずはない。
しかし、確かに輝いているのだ。その満月の正体は……。
カンドラ「ニュー……ムーン……。
ガーディアン!!」
カンドラは空中から地面へ降り立つ。
ハムト「つ、月マン!!生きてたのかニャ!!」
カンドラは黙って頷いた。
カンドラ「月に代わって成敗致す!!ムーンライトウォーク。ポウ!!」
D・ムーン「ば、バカな何故貴様が……。」
D・ムーンはカンドラの攻撃で顔面が崩れかかっていた。
D・ムーン「まだ、終わってはいないぞ……。
残された力を使って、貴様らも道連れだ。」
D・ムーンの身体から、青い光が強烈に放たれた。
ハムト「じ、自爆する気ニャ!!ニャんてわかりやすい悪役ニャ!!」
カンドラ「勇者様、奴にとどめを刺してください!!
私は女王達を護ります。」
D・ムーン「フハハハハハハハ!!」
チャプター 28
D・ムーン「黒キ王……俺は、あなたの様に……。」
D・ムーンは跡形もなく消滅した。
カンドラ「死を悼む者もなく、弔いの言葉もなく、屍も残る事はない……。
せめて私だけはお前を覚えていよう……。
ご無事ですか、光月ノ女王、闇月ノ女王。」
カグヤ「あちしは色々な意味で何も言えないのです。」
ツクヨミ「私もあまりの事に事態が飲み込めていません。」
ハムト「月マン、生きてて良かったニャ。」
カンドラ「ハムトさん。ありがとうございます。私は正確には一度死んでいます。
私の魂と、皆さんが乗ってきたロケットの結界が反応したのです。」
ハムト「ああ、確かにアレウスの結界が張ってあったニャ。」
カンドラ「アレウス様の正義を愛する心に、私の魂が呼応して……。
ニュームーンガーディアンとして転生したのです。
私が確かな存在として復活できたのは、みなさんのおかげです。
もう、黒キ者の力の影響はありません!!」
ハムト「そ、そうか、復活したのは嬉しいけど、くどすぎるニャ……。
でも、生き返って本当に良かったのニャ!!
最後、全部持っていった事以外はニャ!!」
カンドラ「……。これが空気を読めないと言うやつなのでしょうか……。」
チャプター 29
戦いは終わった。月は元に戻り。夢ノ国を照らし続けている。
オウナ「カンドラっち生きかえったのね。よかったぁ。」
オキナ「ツキカゲ、カグヤ、無事だったか?」
ツクヨミ「ええ、大丈夫です。」
カグヤ「勇者様とハムトっちと月マンが護ってくれたのです。」
アレウス「勇者よ。また貴殿に助けられたな。」
ハムト「ニャニャ?アレウスはどうやって来たのニャ?」
アレウス「月が正常に戻ったので、本来使われるべき刻ノ扉で来たのだ。」
カンドラ「おお、アレウス様。我がマスター。」
アレウス「い、意図して造ったわけではないのだがな。
でも、よくやってくれた。」
カンドラ「ありがとうございます。」
アレウス「無事、月に平和を取り戻す事は出来た。
しかし、カグヤよ。君の行動で、たくさんの人が迷惑をした。
私は夢ノ国の神官として、君に罰を与えに来た。」
ハムト「なんニャ。この堅物男!!誰でも間違いはあるのニャ!!」
オキナ「カグヤに罪はない。育ての親の俺を罰してくれ。」
オウナ「オウナも代わりにどんな罰でも受けるよ。」
ツクヨミ「アレウス様、どうか許してあげてください。」
カグヤ「いいよ。みんな。あちしは黒キ者に操られていたけど……。
どうせ上手くいかないなら、これでいいやって思ったのです。
あちしは、あちしに敗けたのです。
みんな、これだけ心配してくれているのにね……。
だから、あちしは「つぐなう」のです。」
ハムト「アレウス、許してあげるニャ!!」
アレウス「カグヤよ。君は月を治めるには少し経験が足りないようだ。
よって、夢ノ国で暮らし、見聞を広めるのだ。」
ハムト「は?ニャ?それが罰?」
アレウス「また、生まれ故郷を離れるのだ。辛いだろう?」
ツクヨミ「ありがとうございます。アレウスさん。」
カグヤ「また、みんなと一緒に住んでいいの?」
アレウス「もちろんだ。」
オキナ「こんなTAKE TRUEな日はないぜ。」
オウナ「ツキカゲ、カグヤ。ずっと一緒だよ。
辛い事があったらオウナに話してね。」
オウナは2人を優しく抱きしめた。
ハムト「頭コチコチな割には、良い事思いつくニャ。アレウス見直したニャ。」
アレウス「妥当な処置をしたまでだ。勇者よ。これで良かったかな?
若者や、小さい子供に責任を背負わせるのが夢ノ国の在り方ではないと思う。
そして、カンドラ。女王達が居ない間、お前に月の守護を命じる。」
カンドラ「わ、私がですか? 」
アレウス「月の守護者。いや、月の勇者と言ったところかな。」
ハムト「つ、月の勇者ニャ……。」
カンドラ「そ、そんな。勇者様ほどの働きはできないと思いますが、頑張ります!!」
ハムト「イロモノヒーローに護られる月ノ民も大変だニャ……。」
青く光る星を、あなたは見ていた。
月の満ち欠けの様に変化を続け、異世界と繋がる理想郷。
あなたの帰る場所、夢ノ国。
チャプター 30
夜空に浮かぶ、満月をカグヤは眺めていた。
静かにそよぐ風と鈴虫の声が、耳に心地よかった。
オウナ「カグヤっち。お団子食べる?」
カグヤ「食べるのです。」
ツキカゲ「私も食べたいです。」
オキナ「食べるときぐらいは仮面取ったほうがいいぞ。」
ツキカゲ「うん、ずっとこの姿でいたものだから。」
オキナ「カンドラは元気にやっているかなぁ。」
オウナ「きっと、元気にムーンウォークしているよ。」
ツキカゲ「私は今回の事件を経て、目標が出来た。」
ツクヨミ「私は、もう自分を偽る必要はないんですね。
いつか、この夢ノ国の様に月を楽しい場所にしたい。」
カグヤ「あ、そうか。あちしたちで月を楽しい場所にすればいいのです。」
ツクヨミ「それは私達にしか出来ない事だと思っています。」
カグヤ「そうなのです。もっと夢ノ国の事を知るのです。」
オキナ「じゃあ、今度TAKE TRUEの全国ツアーについてこいよ。」
オウナ「みんなで夢ノ国を回ろっか?」
カグヤ「ツクヨミ姉様。そうと決まれば準備なのです。」
ツクヨミ「ええ、使命ではなく、自分の夢に向かって歩けるように。」
オウナ「女王以外にやりたい事がみつかったら、その時考えればいいんだよ。」
オキナ「そういう事だ。悩まない人生なんて無いんだから。」
オウナ「そうしたら、カンドラっちが月の王様になってくれるかもしれないよ?」
カグヤ「え?」
ツクヨミ「え?」
オウナ「冗談よ。ウフフフ……。」
ツクヨミ達の笑い声が、満天の星空に弾けた。
月は、闇の中の一縷(いちる)の希望を現す。
人々は夜空を見上げ、明日への希望を繋ぐ。
2人の女王も煌々と輝く満月を見上げ、微笑んだ。
いつか、彼女達が帰る場所、夢ノ月。
光闇の双月 後編 完
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