シナリオ 光闇の双月 前編

 
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チャプター 1


青く光る星を、あなたは見ていた。
重力という鎖を断ち切り、岩と砂の大地に立つ。
ここは夢ノ月。夢ノ国の月面にあなたは居た。

ハムト「夢ノ国の事も良くわからニャいのに月まで来てしまったのニャ……。
    夢ノ月には空気があるニャ。月面人もいるのニャ。
    そして、大きな戦争があったのニャ。
    勇者とハムトは、それに打ち勝ち、また伝説を作っちまったのニャ。」

その時、人型の発光体が後ろ向きで滑る様に近付いてきた。

カンドラ「勇者殿。ハムトさん。ここら辺一帯の魔獣は討伐できましたぞ。」

ハムト「おお、月マン。ご苦労だったのニャ。」

カンドラ「ハムト殿。私は月マンではありません。ムーンガーディアンカンドラです!!」

ハムト「もうねー。ハムトはねー。イロモノキャラといたくないニャ。」

カンドラ「失敬な。私はアレウス様の結界から生まれた戦士ですぞ。」

ハムト「最近、一人はイロモノ枠がいる様な気がするニャねー。
    ニャンでこんな事になったのかというと……。
    恒例の回想シーンニャ。」


チャプター 2


一週間ほど前。
王都の大広間に刻ノ扉が現れた。
刻ノ扉は、夢ノ国に危機が訪れた時、勇者の前に出現する時空を移動する扉である。

アレウス「勇者よ。月面での戦いが激化しているようだ。至急援軍に行って欲しい。」

ハムト「ちょ、ちょ待つニャ。月面って何ニャ。」

その時、人型の発光体が後ろ向きで滑る様に近付いてきた。

カンドラ「夢ノ国の皆さん。夢ノ月に危機が訪れています。私達に力を貸してください。」

ハムト「ニャニャ!!その動き。ムーンウォークニャ!?っていうか月?月マン!!
    突っ込み追いつかないニャ!!」

トト「このヒト(?)はカンドラさんって言うんだよ。」

ルー「月で魔獣と戦っている戦士の一人です。」

ハムト「月って人住んでるのニャ?」

アレウス「夢ノ国の月はどういう物か考えた事はあるか?」

ハムト「月は月なんじゃニャいの?」

アレウス「夢ノ国は意思の力で確かな存在となる。それは月も同じなのだ。
     月はこうあって欲しいという思いで存在するのが夢ノ国の月なのだ。」

トト「夢ノ国と繋がる世界の多くには月が存在する事が多いんだよね。
   勇者のヒトの世界にも月があると思うんだ。」

ルー「月を見て物思いに耽る人。その姿を詩にする人。色々な思いで月は存在するのです。」

テラス「色んな世界の月の形の集合体みたいなものなんだよ。」

ハムト「まぁ、それは何となく理解できるニャ。
    それと、このイロモノキャラと全然話が結びつかないのニャ!!」

カンドラ「イロモノとは失礼な。人と姿形は違えど、礼儀はわきまえているつもりです。」

ハムト「もうね。最近イロモノ増えてきたと思うのニャ……。」

アレウス「そこも説明しよう。夢ノ国の月にも住人が存在する。」

トト「月面に人が存在するという伝説や、古代の文明があるという伝説があるよね。」

テラス「うさぎさんがお餅ついてるってお話もあるよね。」

ルー「そういう伝説から生まれ、月に住む人々を、月ノ民と呼んでいます。」

ハムト「百歩譲って、うさぎ人や月面人がいるっていうのは理解してやるニャ。
    でも、この月マンは意味わからないニャ。」

カンドラ「月マン!?私はカンドラです。」

ハムト「まぁ、しょうがないニャ。聞いてやるニャ……。」


チャプター 3


アレウス「夢ノ国の大地と月の距離は遠い。月面の世界には基本的に干渉は出来なかった。
     しかし、黒キ者は違った。奴は空間を自由に移動する事が出来る。」

ルー「黒キ者は、遥か昔。月を拠点にしようと企んだのです。」

アレウス「我々は王都の転送装置から結界を月に送り援護したのだ。」

ハムト「大掛かりな話ニャね。」

トト「こちらにはテラスがいるから月とは交信出来るんだ。」

テラス「えへへ。すごいでしょ。」

アレウス「流石の黒キ者も月に移動するのには力を消耗するらしい。
     月への攻撃は、そこまで厳しくはなかったようだ。」

カンドラ「しかし、黒キ者が大量の魔獣を月に放ったのです。
     我々だけの力では、とても倒せそうもない。」

アレウス「このままでは月は喪界へと変えられてしまう。」

ルー「おそらく、その危機を察知して刻ノ扉が現れたのだと思います。」

カンドラ「お願いします。勇者様。月ノ民を救ってください。」

ハムト「まぁ、仕方ないニャ。月が無くなるとお月見の団子が食べれないニャ。」

ルー「勇者様お気を付けください。」

アレウス「月ノ民を頼む。」

トト「あー、ボクも一度月に行きたいなー。」

テラス「勇者様。がんばって!!」

あなたとハムトは刻ノ扉を越えた。カンドラもムーンウォークで扉を越えた。


チャプター 4


ハムト「回想終わりニャ。まぁ、そんな感じで今に至るニャ。」

カンドラ「勇者様のおかげで、月ノ民は攻勢に出ることができました。」

ハムト「まぁ、勇者とハムトに任せればこんなもんニャ。」

カンドラ「月は人々の意思の集まり易い場所です。
     月という形は確かな存在でも、私達月面人の存在は不確かな物なのです。
     月に人間は住めないという認識のほうが強いですからね。」

ハムト「いや、月面人代表みたいに言うニャよ。月マン以外は普通の人もいたニャ。
    大体月マンは何者なのニャ。ムーンウォークするのも月マンだけだしニャ。」

カンドラ「私はアレウス様の結界から生まれました。意思を持った結界と言ったところでしょうか。」

ハムト「アレウスもけったいな物作ったのニャ。」

カンドラ「アレウス様も結界が意思を持つとは思ってはいなかったようです。
     私は偶然生まれた存在なのです。
     しかし、月ノ民を護りたいという気持ちは強くあります。
     この戦いももう少しで終わります。良かった。これで月ノ民に平和が訪れる。」

ハムト「この戦いが終わったらどうするニャ?」

カンドラカグヤ様を地上へお迎えにあがります。」

ハムト「カグヤってかぐや姫ニャ?おとぎ話に出てくるみたいニャ?」

カンドラ「おとぎ話とは違いますね。
     カグヤ様は、戦争が激化した際に地球へ緊急避難したのです。
     私が生まれる前の話ですがね。」

ハムト「刻ノ扉もなしにニャ?」

カンドラ「月ノ都にも王都の様な転送装置があるのです。
     しかし、エネルギーの充填に非常に時間がかかるのです。
     私が勇者様をお迎えにあがった際にも使用しました。」

ハムト「ニャルほどニャ。場所はわかっているのニャ。」

カンドラ「座標はわかっています。東方のある山です。」

ハムト「ふーん。ここら辺の魔獣を倒したら行くのニャ。」


チャプター 5


あなた達は魔獣を倒すと月ノ都へと帰って来た。
月ノ都は大きなクレーターの内部にあり、中央には白い尖塔が建っていた。
都市全体を淡く白い光が包み、静寂と安らぎを感じさせた。
その落ち着いた雰囲気とは裏腹に戦いに勝利した月ノ民は勇者の帰還に熱狂していた。

ハムト「すごい熱狂なのニャ。まぁ、ここでも世界を救ってしまった勇者とハムトなのニャ。」

カンドラ「あまりゆっくりしては居られません。また黒キ者が現れるかもしれません。
     早く地上へ行かないと……。」

ハムト「カグヤってそんなに大事なのニャ?」

カンドラカグヤ様は月を統べる資格のある者です。」

ハムト「なんか出来るのかニャ?」

カンドラ「結界術を使う事が出来ます。アレウス様と同じ様な結界ですね。
     特に月ノ都を防御する時に強い結界を張れるのです。
     カグヤ様に月ノ女王になっていただき結界を張ってもらわねばならないのです。
     また避難した時には幼かったのですが、今は成長し強い力を持っているはずです。」

ハムト「カグヤがいニャイと、ピンチになる度に勇者とハムトが呼び出されそうニャ。
    それは面倒ニャね……。」


チャプター 6


あなたはカンドラに連れられ月ノ都の転送装置の前にやってきた。
何本かの光る竹の様な装置が不規則に並び、蛍の様に規則的に点滅していた。

ハムト「かぐや姫だから竹ニャの?」

カンドラ「そういう訳ではありませんが……。この竹に似たカプセルに入っていただきます。」

ハムト「ニャ、ニャにそれ。転送装置なんだからパッと送ってよ。」

カンドラ「残念ながら月ノ都の転送装置は王都の物や刻ノ扉より便利ではないのです。」

ハムト「ハムトは刻ノ扉で帰りたいニャ。」

カンドラ「王都に戻ってから転送するとエネルギーの無駄になります。
     危険はありませんから。これっぽっちも。」

ハムト「ほ、本当かニャ~。」

あなたとハムトは転送装置の中へと入った。
内部はひんやりとして気持ちが良かった。

カンドラ「それでは行きましょう。5、4……。」

ハムト「ちょ、ちょっと待つニャ。何のカウントダウンニャ。」

カンドラ「転送装置を起動しているだけです。」

カンドラのカウントと共に転送装置は激しく振動しはじめた。

カンドラ「3、2、1……。」

ハムト「これってロケット的な物じゃニャいの!!」

カンドラ「0!!」

あなたとハムトは光となった。


チャプター 7


東方のある地方に竹取ノ里と呼ばれる地域があった。
その土地には、何年かに一度光る竹が発生すると言われている。

オウナ「あれぇ。あの光は見覚えあるなぁ。こっちに向かって来てる……。
    一度に3本来るのは、はじめてねぇ。」

竹取ノ里のオウナは昼には場違いな3本の流れ星を眺めていた。
そう、その流れ星こそが、あなた達だ。

ハムト「ギニャーーーーー!!転送装置とか嘘っぱちニャ!!
    このまま地上に激突して死ぬのニャ。
    勇者は色んな装備で頑丈だから死なニャいかもしれないけど……。
    いくらニャハムート族のパーカーでも無理ニャ。
    耐えられないニャ。文字通り星になるニャ……。バイバイ勇者……。」

カンドラ「落ち着いてください。転送装置には強力な結界が張ってあるので大丈夫です。」

そのままあなた達を乗せた転送装置は地上へと突き刺さり大きなクレーターを作った。


チャプター 8


あなた達は、転送装置から這い出し、辺りを見回した。
のどかな里山が広がり、虫の鳴き声が一際大きく聞こえた。

ハムト「ニャ、ニャンか田舎に来てしまったニャ……。」

カンドラ「勇者様。ハムトさんご無事ですか?」

ハムト「おい、月マン。あれ完全にロケットニャロが!!」

カンドラ「そういう物ですかね。私はこれしか知らないもので……。」

ハムト「王都に来た時も、こんな感じだったのニャ。」

カンドラ「トト様の部屋に直撃したので怒られましたね。」

ハムト「トトならいいニャ。むしろ良くやったニャ。」

カンドラ「とにかくカグヤ様を探しましょう。」

ハムト「まぁ、いいニャ。勇者。行くニャ。」


チャプター 9


ハムト「カグヤって事はおじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらっているニャ?」

カンドラ「地上で優秀な護衛をつけてもらっているとは聞いてますが……。
     特に竹取の翁と呼ばれる者は、その斧で大木を小枝の様に切断すると言われています。」

ハムト「おじいちゃんなのに強そうなのニャ。」

カンドラ「また、月ノ民からも代々月を統べる者を護る剣士がついています。
     あの屋敷のようですね。」

カンドラの指差すほうに、里山には不似合いな大きな屋敷が建っていた。
和風の屋敷の裏手には竹林があり、枝が静かに揺れていた。

ハムト「大きいけど普通ニャね。おじいちゃんとおばあちゃんが住んでそうニャ。」

屋敷の扉が開くと一人の女性が現れ、こちらに歩いてきた。

オウナ「やっぱり月の人だ。こっちに来ると思ったんだぁ。」

ハムト「おい、ギャル。お前誰ニャ。」

オウナオウナだよ。神官様達に言われて、カグヤちゃんを守護してるの。」

ハムト「おばあちゃんじゃないニャ。ギャルニャ。むしろ読モっぽいニャ。」

オウナ「どくも?オウナにはよくわからないけど、月っぽい人がカンドラさんでしょ?」

カンドラ「はじめまして。カグヤ様はご無事ですか?」

オウナカグヤっちは元気だよ。」

ハムト「カグヤっち……。まぁ、いいニャ。話は中に入って聞くニャ……。」


チャプター 10


あなたは屋敷の広間に通された。

オキナ「……。」

ハムト「なんニャ。にーちゃん。ハムトと勇者に文句あるのかニャ?
    確かに月マンは怪しいけど、勇者とハムトは夢ノ国の英雄ニャゾ。」

オキナ「自分、オキナと言うっす。ここでカグヤの護衛をしている者っす。」

ハムト「竹取の翁っておじいちゃんじゃニャいの?」

オキナ「自分はTAKE TRUEのOKINAと呼ばれているっす。」

ハムト「てーくとぅるー?……。って何ニャ?」

オウナ「OKINAはパフォーマーもやってるんだよ。」

ハムト「ぱ、ぱふぉーまー?」

オキナ「歌やダンスで人々を楽しませる仕事っす。吟遊詩人みたいなものっす。」

ハムト「「TAKE TRUE」は何なのニャ!!」

オキナ「自分の所属するパフォーマンス集団です。
    戦うだけでは、人々の心は癒せないと思ってるんす。」

オウナ「OKINAは真面目だねぇ。」

オキナ「子供扱いするなよ。姉貴。」

ハムト「姉弟なのニャ!!」

オキナ「そうっす。」

カンドラ「何か、想像と違いましたね。」

ハムト「月マンよりは普通だけどニャ。」

オキナカグヤは奥にいるっす。」


チャプター 11


オキナの案内で屋敷の奥へと案内された。

カグヤ「つ、月!?」

カンドラ「はじめまして、私はカンドラと申す者。」

ツキカゲ「……。月で戦ってた人?人であってるのかな?」

カグヤ「もしかして、月に帰るって話?」

カンドラ「お喜びください。勇者様のおかげで月に平和が戻りました。」

カグヤ「良かった。良かった。引き続き今の感じでお願いするのです。」

カンドラ「いや、月に帰ってきていただき月ノ女王になってもらわなければ困ります。」

カグヤ「あちしは地上がいいのです。」

カンドラ「な、なんと!?」

カグヤ「地上のほうが面白い事ばかりなのです。
    あと、オキナオウナもいるのです。あちしは地上に残るのです。」

カンドラ「そ、それは困ります。」

カンドラは思わずムーンウォークでカグヤに近付いた。
その瞬間、兎の面を被った人物がカンドラの首筋に刃を向けた。

ツキカゲ「それ以上、カグヤ様に近付くな。」

カンドラ「こ、これは失礼しました。」

ツキカゲ「お前には異質な気を感じる……。」

カグヤツキカゲ。それぐらいで許してやるのです。
    とにかく、あちしはここで暮らします。」

ハムト「ねえ、月マン。勇者とハムトの役目はもう終わりだと思うニャ。
    あとは月マン達の問題ニャ。ハムト達は帰るのニャ~。」

カンドラ「そ、そんな!!一緒に説得してくださいよ!?」


チャプター 12


ハムト「説得とか面倒ニャ。それには別途ギャラが発生するニャ。
    平和は戻ったのでイベント終了なのニャ。いつも前後編とか疲れていたのニャ。」

カンドラ「勇者様。お願いします。何とか言ってもらえないでしょうか?」

カグヤ「あちしは帰りたくないのです。いやいやなのです。」

その時、ツキカゲカグヤに近付きそっと囁いた。

カグヤ「むむむ。わかったのです。では試練を与えるのです。
    あちしの作った月齢ノ迷宮を突破出来れば帰っても良いのです。」

ハムト「だってニャ。月マン。頑張るのニャ。」

カグヤ「迷宮を進むと月の砂の入った砂時計が手に入ると思うのです。」

ハムト「ああ、これ月の砂ニャンか。ニャンか手に入るから拾っておいたのニャ。」

カグヤ「それは差し上げましょう。」

カンドラ「月の砂は集めると便利なアイテムと交換できます。」

ハムト「ああ、納品ニャ。知ってるニャ。」

カンドラ「また地上での月面人の力を高めると言います。」

ツキカゲ「月に帰るには力が必要です。王都の転送装置は膨大な力を集めなければなりません。
     月の転送装置という名のロケットも帰りは想定していません。」

ハムト「は、はっきりロケットと言ったニャ……。
    まぁ、いいニャ。勇者のアイテムのために付き合うだけ付き合うニャ。
    でも、基本的に見てるだけニャからね。」

カンドラ「……(ハムトさんはいつも見てるだけなのでは?)
     わかりました。これも私の仕事ですから。私が突破しますよ!!」

カグヤ「迷宮は裏の竹林にあるのです。」

ハムト「ち、近っ!!」


チャプター 13


竹林の奥に迷宮の入口がぽっかりと空いていた。
あなた達が中に入ると同時に大量の魔獣が襲いかかってきた。
内部は想像以上に入り組んでおり、出口の気配はまったくなかった。

ハムト「ここ、危険すぎニャ!!ニャンでこんな所にこんな物があるニャ!!」

カンドラ「月ノ女王は強大な力を持っているのです。
     迷宮を作る事ぐらいは出来ますよ。」

ハムト「でも、この迷宮殺しにきてるニャ!!」

カンドラ「大丈夫です。敵は私が全部引き受けます!!
     それが約束ですから!!約束ですからぁああああああ!!」

カンドラはムーンウォークで魔獣へ突撃していった。

ハムト「おい、月マン。危ないニャ!!
    しょ、しょうがないニャ。勇者ちょっと手伝ってやるニャ……。」


チャプター 14


あなた達は遂に迷宮を突破した。

カンドラ「ありがとうございます。勇者様。ハムトさん。
     これでカグヤ様も月に帰ってくれます。」

ハムト「ニャア、月マン。カグヤも嫌がってるみたいだし、少し落ち着いてからでいいんでニャいの?」

カンドラ「……。」

ハムト「ハムトは無理やりってのは好きじゃないニャ。
    時間がかかってもオッキーナや読モギャルも一緒に連れていったらどうニャ。
    あ、もちろん兎仮面もニャ。」

カンドラ「確かにそうですね……。私は人間ではないので、人の心がわからないのかもしれません。
     戦いばかりの人生でしたしね……。」

ハムト「月マンは確かにイロモノだけど、悪い奴ではないと思っているニャ。」

カンドラ「ハムトさん。ありがとうございます!!」

ハムト「勇者と一緒に報告に行くニャ!!」


チャプター 15


あなた達が屋敷に戻ると、中はもぬけの空であった。
人の気配は一切なく、静まり返っていた。

カンドラ「誰もいませんね。お仕事とか、食事にいったとか……ですかね……。」

ハムト「……逃げたのニャ。」

カンドラ「え?」

ハムト「逃げたのニャ!!」

カンドラ「いやいや、まさか。私達を騙す訳ないじゃないですか。」

ハムト「ニャロー。ハムト達を騙して時間を稼いだのニャ!!」

カンドラ「ど、どうすれば?」

ハムト「ハムトを騙すとは許せないニャ。
    しかも話し合いをしてやろうと思ったのにニャ。」

カンドラ「しかし、何処に逃げたかわかりません……。」

ハムト「安心するニャ。ハムトさんを怒らすとどうなるか思い知らせてやるニャ。」

カンドラ「ハムトさんが悪い顔になっている……。」

ハムト「ニャニャニャニャハッハッハッハヒィニャ!!
    夢ノ国で逃げられると思うニャよ!!」

カンドラ「ハ、ハムノ者?」


チャプター 16


オウナ「ここまで逃げれば安心だよ。」

オキナ「ああ、そうだな。」

カグヤ「二人とも巻き込んでごめんなのです。」

オキナ「俺達はファミリーっす。気にしちゃダメっす。」

オウナ「そうだよ。家族であり親友じゃない。
    カグヤツキカゲオウナのズっ友だよ。」

ツキカゲ「ずっとも?」

オウナ「ずっと友達って意味だよ。」

カグヤ「嬉しいのです。あちし達は役目に縛られた人生を歩んできたのです。
    地上に避難した時は辛かったですが、今はみんなと離れたくないのです。」

ツキカゲ「私は姫様を護るのが役目。しかし、月ノ民も気がかりです。」

カグヤ「そ、それは……。」

オキナ「そういえばツキカゲはもっと反対するかと思ったっすよ。」

ツキカゲ「少し気になる事があったので……。カンドラとかいう者が……。」

オキナ「確かに、あいつは怪しかったっすね。何かあれば、自分の斧で一刀両断っすよ。」

オウナ「私達のほうが土地勘あるし、いくら勇者様でも追いつけないよ。」

オウナ「いざとなれば私も戦えるしね!!」

ツキカゲ「猫はともかく勇者とカンドラは強敵だ。我々だけで勝てるかわからん。」

ハムト「ニャニャニャニャハッハッハッハヒィニャ!!」

カグヤ「え!?」

オキナ「その声は?」

オウナ「嘘?」

ツキカゲ「バカな、こんな早く追いつかれるなんて!?」

ハムト「今、猫はともかくって言ったニャあ?
    このハムトさんを侮った罪。償ってもらうのニャ!!
    ニャニャニャニャハッハッハッハヒィニャ!!」

カンドラ「それ気に入ってるのではないですか?」


チャプター 17


ハムト「どうしてハムトさんがお前らを見つけたか知りたくニャいかな?
    ふんふん。知りたいニャ。そうかニャ。
    答えは簡単なのニャ。
    神官にトトという小生意気なガキとテラスという残念な娘がいるニャ。
    トトは千里眼の術。テラスは交心術が使えるニャ。
    この2人の能力を使えば夢ノ国で見つけられない者はないのニャ。」

カンドラ「あの……。」

ハムト「月マン。うるさいニャ。説明中ニャ。
    2人共快く力を貸してくれたのニャ。月が確かな存在にならないと困るからニャあ。」

王都の一室――――

トト「なんかハムのヒト張り切ってたなぁ。」

テラス「いつになくやる気になってたよね。カグヤちゃんの命が危ないとか言ってたし。」

ルー「カグヤって子に直接話しかけてみたほうが良かったんじゃないの?」

テラス「うーん、それが出来ないんだよね。特殊な結界が張られているみたいなの。」

アレウス「特殊な結界?あの辺にそんな結界を張った覚えはないぞ。
     何か嫌な予感がするな……。」


チャプター 18


ハムト「どうニャ!!驚いたのニャ。何処に逃げても無駄なのニャ!!
    ニャニャニャニャハッハッハッハヒィニャ!!」

カンドラ「ハムトさん!!」

ハムト「今、いい気分なのニャ!!」

カンドラ「逃げてしまいましたよ!!」

ハムト「ニャ、ニャンだって追うのニャ!!」

ツキカゲ「待て。カグヤを追わせはしない。」

ハムト「ニャニャ。兎仮面ニャ。」

カンドラ「このままでは逃げられてしまいます。」

ハムト「勇者。兎仮面は任せたニャ。月マンついてくるニャ!!」

カンドラ「は、はい!!」

ツキカゲオキナオウナならば、カンドラには負ける事はない。
     しかし、勇者よ。あなたは別だ。いざ、勝負!!」


チャプター 19


あなたの一撃で、ツキカゲの仮面が吹き飛んだ。

ツキカゲ「あ……。」

ツキカゲは素早く仮面を拾い、顔を隠した。

ツキカゲ「流石、勇者。その強さがあれば、本当に月を救えるかもしれない……。」

あなたは不意にどす黒く不吉な気配を感じた。

ツキカゲ「この気配は……カグヤが逃げた方角……しまった!?」


チャプター 20


ハムト「ニャニャニャニャハッハッハッハヒィニャ!!」

カグヤ「ハ、ハムノ者!?」

オキナカグヤは自分達のファミリーっすから。月には行かせないっす。」

オウナ「そうだよ。カグヤっちは私が護る。」

ハムト「ニャに眠たい事を言っているのニャ。
    かぐや姫は月に連れ帰られてこそお話として成立するのニャ。
    問答無用なのニャ!!」

カンドラ「ハ、ハムトさん違うでしょ!?話し合うと言ったじゃないですか!!」

オキナ「話し合う?」

オウナ「そんなの信じられないよ。ハムノ者は戦う気満々じゃない。」

ハムト「月マン。月ビームを撃ってやるのニャ。」

カンドラ「そんなビーム出ませんよ。私は本当に話し合いに来たのです。
     私は結界が具現化した者。人ではありません。故に人の心はわからないかもしれません。
     しかし、学ぼうという気持ちはあります。
     どうか信じてください。」

オキナ「自分。この人嘘をついている様に見えないっす。」

オウナ「そうね。話だけは聞いてあげてもいいよ。」

カンドラ「……。」

その時、カンドラの後頭部が不自然に盛り上がった。

ハムト「は?ニャ?月マン。頭の形おかしいニャ。どうしたのニャ?」

カンドラ「え?私の頭が何か?」

黒キ者「月の裏側を人は見る事は出来ない……。
    カンドラよ。結界が勝手に意思を持つ訳ないだろう?
    俺が月ノ女王を攫うために作ったんだよ。
    アッアッアッアッハッハッハッハヒィ!!」

黒キ者がカンドラの後頭部から抜け出る。蝉の抜け殻の様に倒れるカンドラ

ハムト「ほ、本物ニャ……。あわわわわ。こいつ本当にヤバイニャ。殺されるニャ……。」

オウナ「オッキーナ。カグヤを護るよ!!」

オキナ「姉貴に言われなくてもわかってるっす。」

カグヤ「(ツ、ツキカゲ……)」


チャプター 21


あなたはツキカゲと一緒にカグヤ達を追った。

ハムト「ゆ、勇者……。大変ニャ……。カグヤが連れ去られてしまったニャ。
    オッキーナと読モギャルは重傷ニャ……。
    でも、月マンが……。」

カンドラ「ゆ、勇者様……。まさか、私が黒キ者に作られた存在だったとは……。
     とんだ笑い話ですね……。これでやっと私も確かな存在になれると思ったのに……。」

カンドラの身体が光を発しながら少しずつ消えていった。

ハムト「つ、月マン。消えちゃダメなのニャ!!」

カンドラ「月を……月を救ってください!!」

ハムト「イロモノキャラが消滅するとか全然笑えないニャ。おい、月マン。月マン。」

カンドラは一筋の光となって天に昇っていった。

ツキカゲカンドラから感じた異質な気配とは黒キ者だったのか……。
     ずっと操られていたのか……。可哀想に……。」

オキナ「……自分達がついていながら面目ないっす……。」

オウナ「何の力にもなれなかった。ごめんカグヤっち。」

ハムト「2人共まだ寝てるニャ!!傷は深いのニャ!!」

突然、あなたの前に刻ノ扉が現れた。

ハムト「やったニャ。これで黒キ者を追えるのニャ。」

ハムトは刻ノ扉を急いでくぐりぬけようとした。
しかし、ハムトは扉に激突し鈍い音を立てた。

ハムト「ギニャ!!いったいニャ~。どうして開かないのニャ。」

ツキカゲ「月に結界が張られてしまったのかもしれません。
     月ノ女王の力は強大なのです……。」

ハムト「刻ノ扉でダメなのははじめてなのニャ。」

ツキカゲ「夢ノ国の月は朧げな存在なのです。
     本来、黒キ者が喪界を作るのには適さない場所なのです。
     しかし、長年の戦いと女王の存在を利用し、確かな存在に変えようとしたのかもしれません。」

ハムト「月マンもそのために利用されてたのニャ。」

突如、陽の光が陰り出した。太陽が徐々に欠け始める。

オキナ「あ、あれは……。」

ハムト「日食ニャ……。」


チャプター 22


ハムト「もう終わりニャ。ハムトがふざけたせいで……。
    このまま世界が滅びたらニャハムート族の恥さらしニャ。」

ツキカゲ「まだ完全に月は黒キ者の手に落ちたわけではない。
     何とか月に行くことさえ出来れば希望はある。」

オウナ「そうね。まだ何とかなるかもしれないよ。」

ハムト「どういう事ニャ?」

オキナ「黒キ者は知らないんす。」

ツキカゲ「いや、忘れてしまったと言っていい……。月の裏側の世界の事を……。」

ハムト「ニャニャ?どういう事ニャ。」


チャプター 23


太陽が完全に覆われると、夢ノ国にカグヤの声が響き渡った。

カグヤ「地上の民よ。月ノ民は黒キ王を迎え、月を喪界にする事にした。
    そう遠くない未来。喪界となった月が地上を制圧するために動くであろう。
    その時を楽しみにするが良い……。」

太陽は月に覆われたまま、動く事はなかった。

アレウス「何という事だ……。」

テラス「ハムトから連絡があったよ。刻ノ扉が開かないんだって!!」

トト「この夢ノ国の危機に刻ノ扉が開かないなんて……。」

ルー「このまま月が喪界になるのを黙って見ている訳にはいきません。」

テラス「そうだ。トト。ロケット作ってよ!!」

トト「そんなに簡単に作れる訳ないでしょ!!
   いや、待てよ。ボクの部屋に突っ込んだ月の転送装置があるな。
   まぁ、転送装置と言うかロケットだったけど……。
   あれを使えば何とかなるかもしれない。
   でも、あれだけじゃ心許ないな。使い捨てだし。」

ルー「トトはロケットを作って。私はロケットを動かす魔力をオーブに込めるわ。」

トト「でも、あれだけだと材料が足りないな。」

テラス「確か、勇者様達が戻ってきた分があるはずだよ。」

トト「至急、勇者のヒトに連絡をとって欲しい。」

テラス「任せて!!」

トト「アレウス兄さんはロケットの強度を高めるために結界を張って欲しい。」

アレウス「わかった。」


チャプター 24


ハムト「神官達が月に行く用意をしてくれているニャ。」

オキナ「じゃあ、自分も行きます。カグヤは自分らのファミリーっすから。」

オウナカグヤっちはズっ友だもん。私も行くよ。」

ハムト「月に行けばニャンとかニャルんだよね?」

ツキカゲ「ああ、必ずカグヤは助け出す。」

ハムト「じゃあ、勇者。月を取り戻すニャ!!
    月マン……絶対、仇を討ってやるニャ!!」

空の太陽は月で覆われ、黒い月が不気味に輝いている様に見えた。
世界中の人々が、天を仰ぎ見る事しか出来ない。
月は遠く、黒キ者に蝕まれていく事を見ていることしかできないのだ。
世界に再び光を取り戻す事が出来るのは、あなたしかいない。

光闇の双月 前編 完

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